2009 Fiscal Year Annual Research Report
BMPとその新規調節因子USAG-1を軸に慢性腎障害の治療法および診断法を探る
Project/Area Number |
20590954
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柳田 素子 Kyoto University, 次世代研究者育成センター, 准教授 (70378769)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桜井 武 金沢大学, 医学系研究科, 教授 (60251055)
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Keywords | 慢性腎臓病 / BMP / 糸球体 / アルポート症候群 |
Research Abstract |
近年、腎障害モデルに骨形成因子BMP-7を投与すると、障害尿細管が修復され、腎機能が回復することが報告された。これは腎不全からの回復という点では画期的であるが、BMP受容体が全身に存在するため、他臓器への広範な副作用が懸念される。 申請者は腎臓特異的遺伝子探索の過程で腎臓特異的なBMPアンタゴニストUSAG-1を発見した(Yanagita M et al. BBRC 2004)。さらにUSAG-1遺伝子欠損マウス(以後USAG-1 KO)を作成し、 USAG-1 KOが尿細管障害や間質の線維化に抵抗性であること、その尿細管障害抵抗性はBMPシグナルの増強を介していること、USAG-1は腎臓に発現するBMPアンタゴニストの中で最も発現量が多いことを報告した(Yanagita M et al. J Clin Invest. 2006)。以上の結果からUSAG-1を標的とした治療戦略は腎臓におけるBMPシグナルを増強し、CKD治療薬として働く可能性がある(Yanagita M et al. Kidney Int. 2006)。さらにUSAG-1の発現が腎臓特異的であることから、このような薬剤は副作用が少ないことが期待される。 申請者は既に尿細管間質障害におけるUSAG-1の役割を明らかにしたが、末期腎不全の原因疾患の大半は糸球体疾患である。これらの病態においてもUSAG-1がBMP-7の腎修復作用を抑制していることが明らかになれば、USAG-1を標的とした治療戦略の適応疾患が拡大することとなる。 申請者らは、糸球体障害から慢性腎不全を来す遺伝性疾患、アルポート腎症のモデルであるCollagenIVa3遺伝子欠損マウス(以後Col4a3 KO)をUSAG-1 KOと交配し、 USAG-1 KOがこのモデルの惹起する糸球体障害に抵抗性であること、尿細管から分泌されたUSAG-1がmacula densaから糸球体メサンギウム細胞に作用することによって基底膜を障害するMMPを産生させることを明らかにした(Yanagita M et al. J Clin Invest. 2010)。
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