2009 Fiscal Year Annual Research Report
慢性腎不全でのヘプシジン発現制御機構の解明-骨髄造血関連因子の影響-
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20590966
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
友杉 直久 Kanazawa Medical University, 付置研究所, 教授 (80155580)
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Keywords | ヘプシジン-25 / 骨髄造血機能 / 骨髄造血由来因子 |
Research Abstract |
(A)骨髄機能の抑制をきたすヒト病態の解析: 骨髄造血機能が低下すると、赤芽球の成熟過程では本来発現が抑制されていると推測される因子factorXが放出され、肝細胞に作用してhepcidin産生が促進され鉄の血中への流入が制限されると考えられる。【成果】骨髄抑制モデルとして、抗がん剤を投与したマウスの骨髄液中のペプチド、遺伝子発現を解析し、oncostatin M(OSM)、leukemia inhibitory factor(LIF)の発現亢進を認めた。このOSMとLIFは、培養hepatoma cell linesを刺激し、hepcidin-25産生を亢進させた(Int J Hematol)。【意義】IL-6によるhepcidin-25の発現亢進は炎症時の貧血の原因になっているが、IL-6ファミリーのOSMやLIFもJAK/STAT伝達系を介してhepcidin-25の発現を刺激することが判明した。【重要性】以上の結果は、骨髄造血機能が低下すると骨髄での発現が亢進するOSMとLIFが、ホルモンとして肝臓に作用しhepcidin-25の産生を亢進させることを推測させる。 (B)血清の解析: 1、Hepcidin-20の発現 【成果】hepcidinは肝、腎、心で発現することが確認されているが、腎、心での発現意義は不明であった。今回心筋梗塞の早期にhepcidin-20が発現することが明らかになった(Tohoku J Exp Med)。【意義】従来低酸素状態では、肝hepcidin遺伝子発現は抑制されるが心hepcidin遺伝子発現は亢進することが報告されていた。今回、心筋梗塞でみられる心筋虚血はhepcidin-20分泌を亢進させていた。【重要性】hepcidin-25は鉄代謝制御因子であるが、hepcidin-20は抗菌作用をもつと考えられている。これは虚血時の感染防御反応のひとつと推測される。 2、腎がんのhepcidin発現 【成果】腎がん患者血清のhepcidin-25発現は亢進していたが、腎がん組織のhepcidin遺伝子発現は著明に抑制されていた(BMC Cancer.)。【意義】がん組織の周囲組織にはしばしば炎症所見がみれる。この炎症が誘因となり血清hepcidin-25産生が亢進するものと考えられる。一方、がん細胞は増殖のために鉄を必要としており、hepcidin発現を抑制し鉄を確保しようとする合目的な反応と思われる。【重要性】血清hepcidin-25産生が亢進することにより血中への鉄供給が抑制されることから、鉄を必要とするがん細胞の増殖を抑制する宿主の防御反応と考えられる。腎がんの早期診断への応用が期待される。
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Research Products
(11 results)