2008 Fiscal Year Annual Research Report
カルボニルストレスによる腎循環調節と高血圧発症メカニズムの解析
Project/Area Number |
20590970
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森 建文 Tohoku University, 高等教育開発推進センター, 准教授 (40375001)
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Keywords | カルボニル物質 / 腎循環 / メチルグリオキサール |
Research Abstract |
本研究では慢性腎臓病の病態に対するメチルグリオキサール(MGO)の役割について検討することを目的とした。慢性腎臓病モデルのDah1食塩感受性高血圧(Dah1S)ラットにMGOを8-12週間経口飲水投与すると血圧の上昇とともに尿中アルブミン排泄が増加し、糸球体障害と尿細管障害が観察された。さらに、尿細管中心にMGOの代謝産物であるカルボキシルエチルリジン(CEL)と酸化ストレスのマーカーである8-デオキシグアノシンの発現増加がみられた。ヒトの慢性腎臓病やDah1Sラットでみられるインスリン抵抗性や食塩感受性高血圧がMGOに依存しているかどうかを検証するためにSprague-Dawley(SD)ラットに対して高血圧に呈しない量のMGO(経口飲水投与)と高食塩食(4%食塩食)を投与した。それぞれ単独群では血圧の上昇はみられなかったが、併用群では血圧が上昇したことから、MGOが食塩感受性を高め高血圧を発症することが示された。この時、腎臓内のカルボニルストレスと酸化ストレスが亢進することをCELおよびN-ニトロタイロシン(酸化ストレスのマーカー)の免疫染色で確認し、これらがMGOによる食塩感受性亢進のメカニズムと考えられた。さらにSDラットにMGOを投与するとグルコースクランプ法によるM値は低下しインスリン抵抗性が高まることが明らかになった。これはカルボニルストレスの消去剤であるNアセチルシステインやTM2002で抑制できた。血圧の上昇自体が酸化ストレスの亢進につながるかどうかを検討するために麻酔したラットの左腎を動脈縮作により血圧を上昇しマイクロダイアライシス法で腎間質液のH_2O_2を測定し計測したところ、血圧の上昇ともに腎内酸化ストレスは増加した。以上のことから、カルボニルストレスはインスリン抵抗性と食塩感受性を亢進し腎内酸化ストレスを亢進し慢性腎臓病を進行さえることが示された。
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