2010 Fiscal Year Annual Research Report
カルボニルストレスによる腎循環調節と高血圧発症メカニズムの解析
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20590970
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森 建文 東北大学, 病院, 准教授 (40375001)
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Keywords | メチルグリオキサール / カルボニルストレス / 酸化ストレス / ミトコンドリア / 尿細管 / 腎血流 |
Research Abstract |
メチルグリオキサールは解糖系から産生されるカルボニル物質であり、その血中濃度上昇は食塩感受性高血圧を引き起こし、慢性腎臓病を引き起こすことが明らかになった。今まで、麻酔下静脈内投与や腎髄質直接投与による腎髄質血流調節メカニズムを検討してきたが、全身急性作用が強いため、腎髄質血流調節に対するメチルグリオキサールの直接作用を解析することが困難であった。過去に我々は腎髄質尿細管の酸化ストレスが腎髄質血流を調節することを報告していることから、本年度はメチルグリオキサールの腎髄質に対する直接作用を培養した腎髄質尿細管でin vitro実験により検討した。 ラットから尿細管を単離培養し、灌流した腎髄質外層ヘンレのループ尿細管(mTAL)に、活性酸素や過酸化水素特異的蛍光色素を用いて、細胞内酸化ストレスをリアルタイムで観察できる実験系を開発した。この実験系で細胞質過酸化水素標識色素PF6-AM、ミトコンドリア特異的過酸化水素標識色素MitoPY1、ミトコンドリア特異的活性酸素標識色素MitoSOXを用いて、それぞれ細胞質の過酸化水素、ミトコンドリア内の過酸化水素、ミトコンドリア内の活性酸素をリアルタイムに蛍光顕微鏡下に観察した。 灌流液のブドウ糖濃度が増加すると400秒以内に細胞内活性酸素および過酸化水素量は増加した。とくにブドウ糖によるミトコンドリア内活性酸素量の上昇は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬で抑制が認められなかった。しかしながら、Na-K ATPaseポンプ阻害薬のouabainで抑制が認められた。さらにミトコンドリアcomplex阻害薬のrotenoneによりミトコンドリア内活性酸素量の上昇は有意に抑制され、メチルグリオキサールが電子伝達系を介して活性酸素を産生している事が示唆された。さらにメチルグリオキサールの投与においても細胞内酸化ストレスの増加が観察され、ブドウ糖濃度増加によるミトコンドリア内活性酸素量上昇がメチルグリオキサールによる高血圧および腎障害のメカニズムになっていると考えられた。
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Research Products
(17 results)