2009 Fiscal Year Annual Research Report
CAPD患者の腹膜機能不全に対する血管・リンパ管新生を中心とした病態解明と対策
Project/Area Number |
20590972
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 恭彦 Nagoya University, 大学院・医学系研究科, 寄附講座教授 (60402632)
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Keywords | 人工透析学 / 腹膜透析 / 血管新生 / リンパ管新生 / 腹膜機能不全 / 除水不良 / 慢性腎不全 / 間質障害・線維化 |
Research Abstract |
腎疾患におけるリンパ管新生の意義に関して新たな知見を得、発表した(Kidney Int.2009)。ヒト腎生検組織の検討から間質の慢性炎症、線維化が間質のリンパ管新生の大きい誘因となり、VEGF-Cが直接リンパ管新生を誘導することを証明した。これをもとに、ラットUUOモデルを用いて、線維化にともないTGF-bが近位尿細管、集合管、マフロファージからVEGF-Cを誘導しリンパ管新生をきたすことを示し、さらに新生リンパ管は、腎盂・間質の浮腫・尿をドレナージする役割を果たしていることを明らかにした。本研究は2010年米国腎臓学会発表予定であり、現在投稿中である。腹膜におけるリンパ管新生の意義に関する研究も進めている。ヒト腹膜機能不全(除水不全)においてD2-40陽性リンパ管、LYVE-1陽性リンパ管新生が進んでいることを免疫組織染色で認め、real-time免疫染色およびPCRでVEGF-C蛋白、mRNAの上昇を確認した。さらにヒト腹膜透析排液においてもVEGF-C、s-VEGFR3を検出し腹膜透過性と良好な相関も確認した。さらにヒト腹膜中皮細胞からVEGF-C mRNA,蛋白発現を確認し腹膜透過性と良好な相関も確認した。また、もうひとつのリンパ管新生の成長因子であるVEGF-Dも同様な所見を確認し現在検討している。腹膜へのリンパ管新生は、リンパ管の構造からも透析液の吸収から除水不全へと結びつくことが考えられ、この病態生理を明らかにし、さらに動物モデルで抑制実験を行い治療ターゲットになることを今後証明していく計画である。線維化と腹膜透過性の検討からは、線維化の重要な成長因子であるCTGFと腹膜透過性について検討を進め、腹膜組織・PD排液・腹膜中皮細胞それぞれでCTGFの発現との関連性が認められた。またPD排液中のCTGF濃度は腹膜透過性と強い相関を示し、線維化と腹膜透過性についてのバイオマーカーとなりうると考え発表した(Am J Physiol Renal Physiol 2010)。さらに、Tissue-type plasminogen activatorが、腹膜透析腹膜の線維化・障害と強い関連があることを示し報告した(Am J Physiol Renal Physiol 2009)。
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Research Products
(11 results)