2009 Fiscal Year Annual Research Report
インスリンシグナル破綻がアルツハイマー病の分子病態に及ぼす影響
Project/Area Number |
20590990
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
池内 健 新潟大学, 脳研究所, 助教 (20372469)
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Keywords | 認知症 / 脳神経疾患 / 神経科学 / 脂質 / 薬理学 |
Research Abstract |
糖尿病の病態として注目されているインスリン抵抗性がアルツハイマー病・発症の危険因子となることが国内外の疫学研究で報告されている.しかしながら,インスリン抵抗性がアルツハイマー病の発病あるいは病態促進に関与する具体的事象に関する解析はほとんど行われていない.このような背景から,本研究は,インスリンシグナル破綻がアルツハイマー病の病態に与える分子機序を神経系培養細胞を用いて明らかにすることを目的に実施した. 本年度は,タウ(4リピート1N)を安定発現する神経系培養細胞(Neuro2a)を作成した.この安定発現細胞にインスリン刺激を行い,インスリン受容体のリン酸化およびそれに続発するシグナルカスケード,具体的にはpAktおよびpGSK3 βについて解析した.アミロイドβ(Aβ)を過剰に産生するSwedish型アミロイド前駆体タンパク変異を一過性に安定発現細胞に発現させると,インスリン刺激後のインスリンシグナル伝達関連分子のリン酸化が抑制された.Aβ過剰産生環境で培養した細胞よりライセイトを抽出し,リン酸化タウを特異抗体で解析したところ,リン酸化タウが蓄積する傾向を認めた.一方,Aβ産生を抑制する阻害剤を細胞に添加すると,異常タウリン酸化は生じなかったことから,タウのリン酸化誘導はAβ依存性に生じている可能性が考えられた. これらの結果から,過剰Aβの産生によりインスリンシグナルの伝達不全と異常タウリン酸化が誘導されることが示唆された.
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