2010 Fiscal Year Annual Research Report
神経変性疾患におけるDNA修復能の検討と修復促進による治療基盤の確立
Project/Area Number |
20591008
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
上野 聡 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40184949)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 俊雄 奈良県立医科大学, 医学部, 研究教授 (10115280)
|
Keywords | 臨床神経分子遺伝学 / DNA修復 / 神経変性疾患 / 酸化的ストレス / 中心体 / Parkin |
Research Abstract |
これまでに、Parkin遺伝子のエキソン4欠失ホモ接合体であるautosomal recessive juvenile Parkinsonism(ARJP)兄妹例から得た皮膚線維芽細胞の比較解析によって、軽症例(妹)細胞においてはスプライシングの過程でエキソン3がさらに失われ翻訳フレームが修正されることが判明した。その結果、産生される変異Parkin蛋白(PaDel3, 4)が、本来は細胞質蛋白であるにもかかわらず、ユビキチンリガーゼ活性を保持したまま核内へ移行することを確認した。酸化的ストレス存在下の患者細胞において、PaDel3, 4は核内でサイクリンEのユビキチン化と分解を促進し、細胞周期の進行を遅らせ、DNAを修復して細胞死を抑制することを証明した。一方、重症例(兄)細胞では、Parkin蛋白欠落のためサイクリンE等が過剰発現し、DNA修復を低下させ細胞死を増強することが判明した。今年度はこの知見が酸化的DNA損傷のもう一つの修復機構であるヌクレオチド除去修復にも有効であるか検討した。モデルDNA損傷として紫外線誘発の2種類のピリミジン2量体型損傷を採用し、照射後24時間の修復動態を調べた結果、正常細胞および2種類の患者細胞間で有意な差異がなかった。また、紫外線による細胞死についても3種類の細胞間で差異がなかった。それ故、Parkin蛋白欠損細胞における酸化的ストレス高感受性はヌクレオチド除去修復機構によるDNA修復低下とは関係しないことが明らかになった。次に、細胞周期制御に異常を持つ患者細胞が酸化的ストレス処理後にゲノム不安定性を示すかについて、中心体の数的・形態的異常を基準に検討した。その結果、正常細胞<軽症例細胞<重症例細胞の順に異常中心体をもつ細胞頻度が増加した。この結果は、ARJP患者は神経変性に加え発がんリスクも上昇している可能性を示唆する。
|