2008 Fiscal Year Annual Research Report
多発性硬化症におけるIL-17産生性T細胞の病原性および治療標的に関する研究
Project/Area Number |
20591014
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
荒浪 利昌 National Center of Neurology and Psychiatry, 神経研究所免疫研究部, 室長 (60435724)
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Keywords | 多発性硬化症 / T細胞分化 / インターロイキン17 |
Research Abstract |
多発性硬化症(MS)は,T細胞が介在する、自己免疫性脱髄疾患であると考えられている。近年インターロイキン17(IL-17)を産生するT細胞(Th17細胞)が、種々の自己免疫疾患動物モデルの病原性細胞であると報告されている。しかし、MS病態へのTh17細胞の関与については、いまだ詳細は不明である。本研究の目的は,MSのTh17細胞の抗原特異性および病巣への浸潤を解析し、MS病態への関与を明らかにすることにある。 我々は最近ヒト末梢血リンパ球のケモカイン受容体発現パターンを解析し、Th17細胞がケモカイン受容体CCR2陽性CCR5陰性であることを報告した(W.Sato et al.J Immunol.2007 178:7525-9)。ヒトTh17細胞の移動における、CCR2の重要性を調べるため、ヒト末梢血リンパ球のCCR2受容体リガンドCCL2に対する走化性実験を行なった。その結果、ヒト末梢血をCCL2へ引き寄せられた分画とそうでない分画に分離し、サイトカイン産生能を測定したところ、前者が有意に高いIL-17産生を示し、Th17細胞がCCL2へ走化性を示すことが分かった。さらに、MS患者と非MS神経疾患患者の2群より、末梢血および髄液を採取し、T細胞上のケモカイン受容体発現パターンを解析した。その結果、末梢血リンパ球においては、ケモカイン受容体発現パターンにこれら2群間に差は認められなかったが、髄液細胞においては、MS患者においてのみ、CCR2陽性細胞の頻度の増加が認められた。したがって、MS病巣への浸潤に、CCR2受容体とCCL2が関与していることを示唆する。以上より、髄液細胞のケモカイン受容体解析は、MS病態へのTh17細胞関与の解明に繋がる可能性があると考えられる。
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