2009 Fiscal Year Annual Research Report
多発性硬化症におけるIL-17産生性T細胞の病原性および治療標的に関する研究
Project/Area Number |
20591014
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
荒浪 利昌 National Center of Neurology and Psychiatry, 神経研究所免疫研究部, 室長 (60435724)
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Keywords | 多発性硬化症 / T細胞分化 / インターロイキン17 |
Research Abstract |
多発性硬化症(MS)は,T細胞が介在する、自己免疫性脱髄疾患であると考えられている。近年インターロイキン17(IL-17)を産生するT細胞(Th17細胞)が、種々の自己免疫疾患動物モデルの病原性細胞であると報告されている。しかし、MS病態へのTh17細胞の関与については、いまだ詳細は不明である。本研究の目的は,MSのTh17細胞の抗原特異性および病巣への浸潤を解析し、MS病態への関与を明らかにすることにある。 我々は最近ヒト末梢血リンパ球のケモカイン受容体発現パターンを解析し、Th17細胞がケモカイン受容体CCR2陽性CCR5陰性であることを報告した(W. Sato et al. J Immunol. 2007 178 : 7525-9)。MS患者と非炎症性神経疾患患者の2群より、末梢血および髄液を採取し、T細胞上のケモカイン受容体発現パターンを解析した。その結果、末梢血リンパ球においては、ケモカイン受容体発現パターンにこれら2群間に差は認められなかったが、髄液細胞においては、MS患者においてのみ、CCR2陽性CCR5陽性細胞の頻度の増加が認められた。この細胞は、Th17細胞と異なり、IFN-γとIL-17両方の産生能を有することが分かった。さらに、血液脳関門の破壊などに関与すると考えられている、メタロプロテイナーゼ9の発現が、他のメモリーT細胞分画と比較して、有意に高いことが判明した(論文投稿中)。以上より、MS増悪時に髄液で増加するCCR2陽性CCR5陽性T細胞は潜在的な血液脳関門破壊能を有し、MS病態において重要な役割を果たしていると考えられる。
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