2010 Fiscal Year Annual Research Report
多発性硬化症におけるILー17産生性T細胞の病原性および治療標的に関する研究
Project/Area Number |
20591014
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
荒浪 利昌 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所免疫研究部, 室長 (60435724)
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Keywords | 多発性硬化症 / T細胞分化 / インターロイキン17 |
Research Abstract |
多発性硬化症(MS)は髄鞘抗原を標的とする自己免疫性脱髄性疾患であると考えられている。近年インターロイキン17(IL-17)を産生するT細胞が、種々の自己免疫疾患動物モデルの病原性細胞であると報告されている。しかし、MS病態への関与については、いまだ詳細は不明である。本研究の目的は,MSのIL-17産生性T細胞の抗原特異性および病巣への浸潤を解析し、MS病態への関与を明らかにすることにある。 我々は最近ヒト末梢血リンパ球のケモカイン受容体発現パターンを解析し、Th17細胞がケモカイン受容体CCR2陽性CCR5陰性であることを報告した(W.Sato et al.J Immunol.2007 178:7525-9)。再発MS患者と炎症性および非炎症性神経疾患患者の3群より末梢血および髄液を採取し、ケモカイン受容体発現パターンを用いて、末梢血に比べ髄液での頻度が増加しているサブセットを探索した。その結果、MS患者においてのみ、CCR2陽性CCR5陽性細胞の頻度の増加が認められた。MS再発時の末梢血よりCCR2陽性CCR5陽性細胞とそれ以外のT細胞を分離し、それぞれ髄鞘蛋白あるいは無関係な蛋白存在下で培養すると、CCR2陽性CCR5陽性細胞は髄鞘蛋白特異的なIFN-γおよびIL-17産生を示した。特にCCR2陽性CCR5陽性細胞によるIFN-γの産生量は、それ以外のT細胞の産生量に比べ有意に高いことが分かった。また、血液脳関門の破壊などに関与すると考えられている、メタロプロテイナーゼ9の発現が、他のT細胞分画と比較して、有意に高いことが判明した(論文投稿中)。以上より、MS増悪時に髄液で増加するCCR2陽性CCR5陽性T細胞は、IFN-γおよびIL-17産生性髄鞘抗原特異的T細胞を含み、潜在的な血液脳関門破壊能を有し、MS病態において重要な役割を果たしていると考えられる。
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