2010 Fiscal Year Annual Research Report
慢性期脳梗塞の病態におけるStat3リン酸化の意義
Project/Area Number |
20591029
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 重明 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (50276242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨田 裕 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60276251)
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Keywords | 脳虚血 / Stat3 / AG-490 / サイトカイン |
Research Abstract |
前年度の実験プロトールを見直した上で、再度薬物投与実験を行った。Stat3の阻害薬であるAG-490を用いて、雄性SDラット(n=48)を既報告(Suzukiet al. J Cereb Blood Flow Metab 19:1256-1626, 1999)の方法に従い、ラット中大脳閉塞モデルを作成し90分閉塞後、再灌流を行なった。皮下埋め込み式ポンプ(Alzet osmotic pomps)により、1週間かけて脳室内に持続的にAG-490投与を行い、コントロールとして生理食塩水を投与する群を置き比較検討した。ラットの神経症状をより厳密に評価する目的で、ラットの行動を画像で記録しcomer test, modified neurological severity scoreなど神経症状の評価をおこなったが、AG-490投与による変化はなかった。組織学的評価としては1,2,4,8週間後に断頭し、灌流固定後クライオスタットで連続凍結切片を作成し、グリア系細胞の変化を観察したが、両群での差は認めなかった。 Stat3の阻害薬であるAG-490によるラット中大脳閉塞モデルを用いた神経保護効果の検討では、実験手技を改良した本年度の検討でも有意な差を証明することはできなかった。慢性期脳梗塞の病態におけるStat3リン酸化の意義について総括すると、すべてが神経保護作用を有しているとは考えにくい。予想に反する結果となった理由として、(1)神経保護因子の細胞情報伝達がStat3以外にもERK, Akt系など多岐にわたっているため、(2)Stat3の上流には神経保護因子以外にも、脳梗塞の炎症増悪の寄与するサイトカインも存在し、必ずしも一元的な効果のみではないものと考えられる。以上から、Stat3細胞伝達を慢性期脳梗塞の治療に応用することは困難と考えられる。 メタボリックシンドロームのモデル動物であるOLET-Fラットを用いた検討では、コントロール動物と比較しラット中大脳閉塞モデルの24時間後の神経障害や脳梗塞領域は明らかに増悪した。今後、IL-6などの炎症性サイトカインやその細胞内情報伝達の中心となるStat3に対して検討をすすめることにしている。
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