2008 Fiscal Year Annual Research Report
軽度認知障害の原因疾患としての海馬硬化性認知症の臨床・分子病理学的研究
Project/Area Number |
20591034
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
山崎 峰雄 Nippon Medical School, 医学部, 講師 (10277577)
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Keywords | 海馬硬化 / TDP-43 / 軽度認知障害 |
Research Abstract |
アルツハイマー型認知症治療の重要な標的は軽度認知機能障害(MCI)であるが、MCIの全てがアルツハイマー型認知症に進展するわけではない。最近の臨床病理学的研究からは、嗜銀顆粒性認知症や海馬硬化性認知症などもMCIの重要な構成疾患として注目されてきているが、今回の検索対象である海馬硬化性認知症の病態はほとんど判明していない。海馬硬化性認知症の病態機序の解明のためには、症例を臨床病理学的に丹念に観察する必要がある。平成20年度には、まず、病理学的に海馬硬化所見を認める認知症剖検例の抽出を行ったが、過去の剖検例では純粋に海馬硬化のみを呈する症例がほとんどなかったため、アルツハイマー型認知症およびグアム島パーキンソン認知症で、小脳プルキンエ細胞の脱落を伴わず、海馬神経細胞が比較的選択的に脱落している症例を対象とした。病理学的検討としては、最近前頭側頭型認知症や筋萎縮性側索硬化症で注目されているTDP-43と、海馬神経細胞脱落の関係を検討した。中性緩衝ホルマリン弱固定ブロックから切片を切り出し、市販ポリクローナル非リン酸化TDP-43抗体を用いて免疫染色を行うと、正常細胞の核にはTDP-43染色性を認めるが、TDP-43陽性封入体を有する細胞の核内ではTDP-43染色性が消失している。本研究の対象症例において、この核の正常染色性が失われている海馬神経細胞を観察したところ、TDP-43陽性封入体を伴わない所見が認められた。この所見は、TDP-43が細胞内に蓄積する病態とは異なる機序によって海馬神経細胞死が起こる可能性を示唆するものである。
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Research Products
(3 results)