2009 Fiscal Year Annual Research Report
局所性ジストニアにおける神経伝達異常の解明-ドパミン系とアデノシン系に注目して
Project/Area Number |
20591038
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
石井 賢二 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都, 研究副部長 (10231135)
|
Keywords | 原発性眼瞼痙攣 / 局所性ジストニア / 羞明 / ポジトロンCT / 脳ブドウ糖代謝 / 視床 / 上丘 |
Research Abstract |
【背景及び目的】原発性腹瞼痙攣(EBS)は不随意な眼輪筋の収縮を特徴とし、局所ジストニアに属すると考えられている。その発症機序はいまだ明らかになっていないが、大脳基底核の関与が推測されている。大脳基底核は随意運動遂行時の筋トーヌスの調整や反射性筋収縮のコントロールに関与していると考えられている。我々は大脳基底核におけるドパミン神経伝達系とアデノシン神経伝達系に着目して、ジストニアの発症機序における両伝達系の関与を明らかにすることを計画した。今年度は、ポジトロン断層法(PET)を用いて基底核に存在するアデノシンA_1受容体密度の計測を進めると共に、既に取得したFDG-PET画像を用い、EBSに頻度高く伴う羞明症状と脳ブドウ糖代謝の関連を解析した。【方法】内服薬による治療を受けたことのないEBS患者群22例(羞明を伴う例:P群11例、羞明を伴わない例:NP群11例)および正常群44例を対象とした。脳ブドウ糖代謝の各群における相違を統計画像法(Statistical Parametric Mapping : SPM2)を用いて解析した。【結果】健常群と比較したときP群では両側視床の代謝亢進(P=0.002)が、NP群では上丘の代謝低下(P=0.005)が検出された。【考察】EBSの発症機序として基底核回路の機能異常があり、視床の代謝亢進として検出できることを既に我々は見いだしていたが(Suzuki J Neurol 2007 ; 254 : 890)、上丘の代謝低下を伴うEBSの一群が存在すること、EBSは羞明症状の有無によりその病態が異なる可能性が示唆された。EBSは機能的に単一の疾患ではなく複数の病態メカニズムが関与している可能性がある。このような病態理解は、今後の治療法の開発に役立つと期待される。
|