2009 Fiscal Year Annual Research Report
メタボリックシンドローム治療に向けた脂質転写因子SREBP-1機能抑制効果の検討
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20591044
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高橋 昭光 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (70344893)
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Keywords | メタボリックシンドローム / 肥満 / 転写因子 / 糖尿病 / 動物モデル / 動脈硬化 / 脂質異常症 |
Research Abstract |
1.野生型マウスにおけるSREBP-1 RNA干渉による肝障害および周辺遺伝子への影響の検討 野生型C57b16マウスにSREBP-1 RNA干渉ウイルスベクターを導入した結果,SREBP-1遺伝子発現は対照群の30%程度に抑制された.肝臓のトリグリセリド含量はノックダウン群で有意に低下する一方,コレステロール含量は約1.5倍に増加した.また,AST・ALTはコントロール群に対して100倍以上の異常高値を示した.脂質関連遺伝子群については,SREBP-2発現が増加しており,これはSREBP-1発現減少の代償的なものと考えられる一方,コレステロール蓄積を説明しうるものと考えられた.またノックダンベクター感染群では,Fatty acid synthaseなどのSREBP-1下流の酵素群の低下も認められる一方,糖新生系や脂肪酸代謝系酵素の発現も著しく低下しており,単なるノックダウンによる影響以外に強い肝障害の影響が考えられた.肝障害の原因は目下不明であるが,SREBP-1下流酵素の一つに予想外に発現が強いものかおり,同遺伝子の発現ウイルスベクターのコンタミネーションの可能性があることが判明した.このウイルスベクターは別の検討で肝障害を来すことが判明しているため,現在,再度SREBP-1ノックダウンアデノウイルスベクターを作成中である. 2.遺伝的肥満モデルマウスを用いたSREBP-1 RNA干渉による影響の検討 KKAy/Ay肥満モデルマウスに対して,上記のSREBP-1ノックダウンベクターを用いて検討した.やはりノックダウン群において血清TGが減少したが,野生型と同様に血糖およびインスリンについては対照群に較べて有意差は認められなかった.この検討でもやはり肝障害がみとめられるため,再作成したノックダウンウイルスベクターで再検討を要すると考えられた. 3.マクロファージに対するSREBP-1ノックダウンの検討 野生型C57b16マウス由来の腹腔マクロファージ(MPM)にウイルスベクターを用いず,ノックダウンコンストラクトをトランスフェクションして検討した.MPMにおいてはSREBP-1cよりもSREBP-1aの発現が多く,ノックダウンによりコレステロール合成が有意に低下した.同MPMの泡沫化抑制については未検討であるが,泡沫化抑制の介入ターゲットの可能性があると考えられた. 4.SREBP-1 KOマウスおよび野生型マウスを食餌性肥満モデルとした場合の検討 野生型、SREBP-1 KOマウスにWestern dietを負荷し,食餌性肥満モデルとした.同モデルではKOマウス群において,対照群の1/5程度の血清TG濃度抑制と,1/2程度の血清コレステロール濃度抑制が認められ,食餌負荷下でのSREBP-1 KOが高脂血症改善に寄与する可眠性が考えられた.また,同モデルではメタボリックシンドロームの最終像である動脈硬化は明かではなかったため,LDL受容体ノックアウトマウスとの二重変異体を作成して,さらなる検討を加える予定である.
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