2010 Fiscal Year Annual Research Report
水代謝異常症におけるバソプレシン分泌と腎アクアポリン水チャネルの動態
Project/Area Number |
20591083
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
石川 三衛 自治医科大学, 医学部, 教授 (70112620)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
船山 大 自治医科大学, 医学部, 講師 (40296116)
中村 智弘 自治医科大学, 医学部, 助教 (60382933)
斉藤 智之 自治医科大学, 医学部, 副手 (90382910)
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Keywords | バソプレシン / 水利尿不全 / 心筋梗塞 / 下垂体機能低下症 / 低Na血症 |
Research Abstract |
今年度は2つの臨床研究を行った。(1) 急性心筋梗塞(AMI)発症後72時間以内にみられる低Na血症と短期・長期予後との関係、および血漿バソプレシン(AVP)濃度との関係を検討した。AMIで入院、PCIを施行した140例において血症Na濃度が135mmol/l以下は29例(20.9%)に認められた。低Na血症群では短期予後で心不全発症例、入院病日の延長が有意に高値であった。また平均920日観察した長期予後でも心死、心不全への移行例が低Na血症群で有意に増加していた。AMI発症後72時間以内に低Na血症を呈した患者では、血漿AVP濃度が4.5pg/ml(対照2.6pg/ml)と有意に高値であった(p=0.003)。AMI発症例で梗塞範囲が広い場合、心拍出量の低下からAVPの分泌亢進を招き低Na血症を惹起することが想定される。AMI病初期に出現した低Na血症はAMI自身の疾患予後を予測する指標として有用であることが示された。(2) 下垂体機能低下症において、高齢者で発見された症例と全年齢での徴候を対比検討して、高齢者の下垂体機能低下症に特徴的な病像を解析した。63歳以上で発見された下垂体機能低下症26例では、感染症などストレス負荷後の低Na血症が多く、血清Na濃度は112-142mmol/l(平均128.8mmol/l)に分布し、低Na血症は22例(84.6%)に認められた。全年齢群での低Na血症は僅か1.1%であり、高齢者では極めて高頻度であった。ACTHの分泌不全は80%以上の症例で認められ、低Na血症を示す続発性副腎皮質機能低下症では発見年齢と血清Na値との間には負の相関が得られた。高齢者の下垂体・副腎系の機能不全ではAVPの分泌亢進を惹起して、水利尿不全を引き起こし希釈性低Na血症を招くことが示唆される。
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Research Products
(4 results)