2010 Fiscal Year Annual Research Report
卵母細胞とBMP分子による卵胞細胞間での機能連携メカニズムの解明とその応用
Project/Area Number |
20591096
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大塚 文男 岡山大学, 岡山大学病院, 准教授 (40362967)
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Keywords | 生殖内分泌 / 骨形成蛋白 / ステロイド合成 / 卵母細胞 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
卵巣発育の経過において、BMPはとくに顆粒膜細胞での卵胞刺激ホルモン(FSH)によるステロイド産生と、細胞分裂機能を統御することで、黄体化抑制因子・増殖因子としての両者の役割をもち、卵胞の発育とFSH刺激に対する未成熟排卵の抑制に寄与する。平成22年度の研究では、下垂体一卵巣機能連係について神経内分泌学的な視点からアプローチし、とくにプロラクチン(PRL)分子に着目した卵巣機能への影響を検討した。PRLは乳腺への作用に加えて黄体機能維持など性腺にも重要な役割をもつ。種々の原因で生じる高PRL血症は生殖内分泌機能に影響し、その機序としてゴナドトロピン分泌の抑制や卵胞のLH受容体発現を抑制が知られるが、詳細な機序は十分に解明されていない。我々は、ラット卵巣顆粒膜細胞・卵母細胞の共培養系を用いて、PRLによる卵胞ステロイド産生への影響をまず検討した。顆粒膜細胞・卵母細胞にはPRL受容体L-,S-isoformの発現を認め、FSHによりPRL受容体の発現が増強した。PRL処理により、FSHによるestradiol(E2)産生およびaromatase発現が抑制され、progesterone(P4)合成およびStAR,P450scc,3βHSD2の発現が促進した。PRLは顆粒膜細胞でJAK/STATおよびMAPK経路を活性化するが、FSHによるERK経路の活性化がPRLによるE2抑制・P4増加に寄与していた。またNogginを用いたBMPの抑制実験により、高PRL状態においては内在するBMPはP4抑制・E2促進に作動することが示唆された。高PRL血症はE2の抑制とP4の増加により卵胞発育に干渉するが、卵胞BMPシステムが活性化されることでPRL作用に対して拮抗する可能性が示唆された。PRLは、卵胞顆粒膜細胞において、FSH受容体下流に生じるMAPK経路の活性化を介してステロイド合成調節に寄与するが、同時にJAK/STAT経路を介して、BMP/Smadシグナルを抑制することで卵胞機能に直接影響することが新たに示された。さらに、卵巣外内分泌腺(視床下部・下垂体・乳腺など)へのBMPの影響について検証し、組織特異的な生理活性をもつBMPが「視床下部-下垂体-卵巣」からなる生殖内分泌系を統御する新たな側面が明らかとなった。
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