2010 Fiscal Year Annual Research Report
巨核球系細胞の白血病・リンパ腫増殖機構における機能解析
Project/Area Number |
20591113
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
服部 浩一 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (10360116)
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Keywords | 血液線維素溶解系 / マトリックスメタロプロテイナーゼ / プロテアーゼ阻害剤 / プラスミノーゲン / Kit-ligand / 血管新生因子 / 骨髄由来細胞 / 血小板 |
Research Abstract |
本研究は、生体内の血小板増加、凝固・線維素溶解系(線溶系)亢進と病的血管新生との関連性、白血病・リンパ腫細胞の生体内増殖における凝固・線溶系亢進の生理学的意義の解明を目的としている。研究代表者らは、これまでの研究で、生体内腫瘍増殖の促進因子と考えられているマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の活性化-潜在型酵素pro-MMPから活性型MMPへの変換が、線溶系因子プラスミノーゲンの活性化-プラスミンの生成によって制御されていることを明らかにした。昨年度までの研究で、代表者らは、マウス生体に移植された白血病・リンパ腫の増殖過程において、生体各所でMMPの活性化が起り、これらがストローマ細胞からの各種の細胞増殖因子の細胞外ドメイン分泌を促進すること、またMMPの活性化に伴って組織中へと動員された血小板を含む骨髄由来細胞が、血管新生因子の組織内供給源として機能していることを確かめた。これらを基礎とした今年度の研究で、代表者らは、線溶系・プラスミン阻害剤の投与が、一部の白血病・リンパ腫の増殖を抑制し得ることを明らかにした。このことは、凝固・線溶系の亢進と白血病・リンパ腫の生体内増殖との強い関連性を示唆するものであり、いわば本研究課題の目的でもあった「白血病・リンパ腫細胞の生体内増殖における凝固・線溶系の亢進の生理学的意義」を具体的に証明したものと言える。また本研究成果として、欧米で治験が暗礁に乗り上げているMMP阻害剤に対して、その上流の線溶系を阻害することによって一部の白血病・リンパ腫の増殖掬制が証明されたことから、今後の白血病・リンパ腫の治療法開発において、線溶系因子群が、MMP阻害剤の代替として、新たな分子標的の可能性を示唆したものと言える。
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