2009 Fiscal Year Annual Research Report
白血病幹細胞に特異的に発現するmiRNA/転写因子の同定とその機能解析
Project/Area Number |
20591134
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
竹中 克斗 Kyushu University, 大学病院, 助教 (30301295)
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Keywords | 造血幹細胞 / 白血病幹細胞 / 遺伝子プロファイル / miRNA / 転写因子 |
Research Abstract |
本研究課題では、白血病幹細胞の維持・制御に必須な転写因子を同定し、新たな分子標的療法の標的と成り得るか基礎的検討を行うことを目的としている。平成20年度では、マイクロアレイを用いた解析で同定された正常造血幹細胞に高発現する遺伝子群について、急性骨髄性白血病検体より分離した幹細胞分画における発現を定量的PCRにて解析し、この解析により正常および白血病幹細胞分画に共通に高発現するmiRNA/転写因子を見出した。平成21年度では、これらの遺伝子群の臨床的重要性について解析し、治療標的としての有効性について検討した。 我々の同定した白血病幹細胞に特異的に発現するmiRNAを含む遺伝子群について、その臨床的意義について検討するために、独立した正常核型急性骨髄性白血病160例の遺伝子発現プロファイルを入手した。遺伝子発現プロファイルと予後との相関を解析した結果、我々の同定した白血病幹細胞関連遺伝子群のうち25個が、上述の急性骨髄性白血病において、生存における非常に強い予後因子となっていることが明らかとなった。すなわち、白血病幹細胞関連遺伝子25個を強発現している症例では、そうでない群と比較して、有意に平均生存期間が短いことが明らかとなった(p<0.0001, HR=2.6, 95%CI 1.8-4.0,平均生存期間236日vs 999日)。これら25個の遺伝子は、ケミカルゲノミクスに基づくレファレンスデータベースと照合すると、化学療法抵抗性と相関していることが示唆され、白血病の"幹細胞性"の特徴のひとつを表していると考えられた。また、興味深いことに、平成20年度に同定した正常造血幹細胞に特異的に発現する225個の遺伝子群も、上述の急性骨髄性白血病において、白血病幹細胞関連遺伝子とともに、非常に強い予後不良因子となっていた。つまり、我々も同定した正常造血幹細胞、白血病幹細胞に特異的に発現するmiRNAを含む遺伝子群は、急性骨髄性白血病の予後不良因子であり、これらの遺伝子群は、新規治療の治療標的になり得ることが明らかとなった(2009年12月7日に第51回米国血液学会で発表)。 次年度では、これらの遺伝子を強制発現あるいはノックダウンするウイルスベクターを用いて、正常・白血病幹細胞へ遺伝子導入を行い、その機能変化をin vitroおよびin vivoにて検討する予定である。
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