Research Abstract |
今回我々は,抗体製剤に頼らないIL-17産生あるいはTh17分化を抑制する戦略の一つとして,カルパスタチンの可能性を新たに見出したので報告する. (方法)カルパイン,カルパスタチンおよびカルパスタチンの最小機能ドメインを含むcDNAをそれぞれクローニングし,レトロウイルスベクター発現系に組み込んで,マウスT細胞,線維芽細胞(NIH-3T3)におけるサイトカイン産生修飾効果を解析した.同時に既存の膜透過性カルパイン阻害剤であるE-64-dで同様の実験を行った.最後にコラーゲン特異的T細胞に,レトロウイルスベクター系を用いてカルパスタチン最小機能ドメインを含むcDNAを導入.発現させ,コラーゲン誘導関節炎(CIA)マウスに細胞移入し,その病態修飾効果を解析した. (結果)Naive T細胞からのTh1, Th2, Th17細胞分化において,カルパインとカルパスタチン発現の経時的変化パターンは異なっており,カルパイン発現はTh1細胞で優位,カルパスタチンの発現はTh2, Th17の順で優位となる傾向を認めた.レトロウイルスを用いたカルパスタチンの過剰発現はTh1およびTh17分化を抑制し,その機序としてIL-2産生への直接的な抑制およびSTAT3のリン酸化抑制を認めた.以上のことはE-64-dによっても再現された.さらに線維芽細胞におけるカルパスタチンの過剰発現は,LPS, IL-17によって誘導されるIL-6産生をブロックし,T細胞同様STAT3シグナルの減弱がその一因と考えられた.ルパスタチン最小機能ドメイン発現コラーゲン特異的T細胞を,CIAマウスに移入したところ,関節炎抑制効果を認めた. (考察)カルパスタチンはCa依存性システインプロテアーゼであるカルパインの特異的内因性阻害物質であり,それに対する自己抗体は関節リウマチや乾癬で特異的に認められる.抗カルパスタチン抗体はカルパスタチンの機能を抑制することが知られており,その抗体価は関節リウマチの病勢と相関する.今回の我々の結果は,カルパイン阻害剤,あるいはカルパスタチンを分泌かっ膜透過性に改変し局所で高発現させることが,T細胞においてはTh1, Th17分化を抑制し,非リンパ球系細胞においてはそのIL-6産生を抑制し,共同して抗炎症作用を発揮する可能性を示唆した.
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