Research Abstract |
【方法】1)慶應義塾大学病院および関連施設の膠原病患者のうち,抗SRP抗体が検出された23例を対象とした。2)自己抗体の検索:HeLa全細胞抽出物を抗原とした免疫沈降法により,患者血清中の自己抗体が認識する核酸成分,蛋白成分を分析した。3)抗SRP抗体陽性23例の従来,未検討であった筋炎の発症様式,臨床特徴(臨床症状,臨床経過,治療反応性,予後など)を,詳細に解析した。4)抗SRP抗体陽性筋炎例の筋病理組織学的特徴を検討した。 【結果】1)抗SRP抗体陽性23例中21例(91%)血清が筋炎を持ち,Bohan分類でI型:14例,II型:3例,III型:2例,IV型:2例であった。2)筋力低下は,20例中!2例(60%)が徒手筋力検査で3以下であった。ステロイド減量中に,19例中12例(63%)が再燃し,21例中8例(38%)で免疫抑制薬が併用された。3)抗アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)抗体と関連する,間質性肺炎は5例(22%),関節炎は4例(17%),レイノー現象は1例(4%)と低頻度であった。4)悪性腫瘍は2例(上咽頭癌,肺癌),重症筋炎と関連する嚥下障害は3例(14%)に併発した。5)筋炎の発症時期(季節)における有意差はなかった。6)抗SRP抗体陽性筋炎11例の筋病理所見を検討すると,全例に壊死または再生像を認めたが,11例中10例で炎症細胞浸潤を認めず,type I fiber predominanceを11例中6例(55%)に認めた。 【結語】抗SRP抗体は重症,再燃性筋炎と関連することが明らかとなった。また,抗ARS抗体と異なる臨床病態を形成し,同抗体の産生機序の追究はPMの病態を解明する上で重要と考えられた。抗SRP抗体陽性筋炎例の筋病理組織像は炎症所見の明らかでない「壊死性筋症」が特徴的であるが,“type I fiber predominance"が注目された。同組織学特徴と同抗体の反応様式,臨床病態との関連機序の解明が今後の課題である。
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