2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト好中球におけるオゾン産生の機序解析ならびに殺菌増強作用への応用
Project/Area Number |
20591200
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山下 浩平 Kyoto University, 医学研究科, 助教 (80402858)
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Keywords | 好中球 / オゾン / 殺菌 / 免疫グロブリン / アミノ酸 |
Research Abstract |
好中球が産生する活性酸素は、病原微生物に対する生体防御に重要な役割を果たす一方、その強い反応性のため組織傷害をきたすことが知られている。昨年度我々は、Trp, Met, His, Cysの4種アミノ酸が活性酸素の一種である一重項酸素からオゾン産生を触媒する作用を有すること、そしてこれらアミノ酸の触媒作用により産生したオゾンが、ヒト好中球において大腸菌や腸球菌などに対する殺菌に寄与することを明らかにした(Yamashita K et al. PNAS 105, 16912-7, 2008)。 今年度は、一重項酸素やオゾンなどによる組織傷害作用を検討するために、急性前骨髄球性白血病細胞株であるNB4 cellを用いて、血管内皮細胞の透過性を調べた。 NB4 cellはレチノイン酸によって成熟好中球へ分化誘導させることができ、この成熟好中球が活性酸素産生能を獲得した場合、活性化好中球から放出された活性酸素が血管内皮細胞の透過性を亢進させると仮説を立て、実験を立案・遂行した。この実験系は、我々が臨床でしばしば経験するATRA症候群のin vitroモデルと考えられる。その結果、レチノイン酸無処理のNB4 cellは活性酸素産生能が極めて低く、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)の透過性を変化させなかったが、レチノイン酸処理して好中球に成熟した場合、活性酸素産生能を獲得し、PMA刺激によって産生した活性酸素がHUVECの透過性を亢進させた。また、この血管透過性の亢進はミエロペロキシダーゼ阻害薬で有意に抑制され、ミエロペロキシダーゼの下流で産生する一重項酸素などの活性酸素が深く関与していることが示唆された。この所見は、ATRA症候群に対して活性酸素消去剤投与による治療法の確立に結びつく可能性がある。本成果は、専門誌(Leuk Res, 34, 373-8, 2010)に発表した。
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Research Products
(3 results)