Research Abstract |
昨年度に引き続くマクロファージのcytosolic phospholipase A_2 (cPLA_2)依存性の結核菌やMycobacterium aviumなどの抗酸菌殺菌能についての検討で, 野生型およびS505A, S515A, S727Aの変異導入cPLA_2 cDNA遺伝子をEGFPのN末端側に融合させたEGFP-cPLA_2融合蛋白発現ベクターの作成を完了した。さらに,これをエレクトロポレーション法でRAW264.7マクロファージに遺伝子導入することにより薬剤セレクション株を得ることが出来た。現在のところ,共焦点顕微鏡下での観察では,EGFP-cPLA_2融合蛋白発現が十分なレベルに達していないので,さらに細かい条件検討を進めつつある。これに平行して,これまで一連の研究によりATPなどの薬剤の作用により誘導されるアポトーシスに連動した形でのマクロファージ殺菌能の発現には,cPLA_2の活性化とファゴソームへのtranslocationが重要であることが分かっているので,別のタイプのマクロファージ殺菌能の増強剤であるピコリン酸のアポトーシス誘導能についての検討を進めた。この結果,ピコリン酸はマクロファージの抗酸菌殺菌能を特にクラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬の存在下に強く抑制することが明らかになったが,ピコリン酸は細胞膜のouter leafletへのphosphatidylserineの移行を促進し,確かに早期のapoptotic eventsを誘導するような作用を示すことがAnnexin法によるFACS解析で明らかになった。ただこの場合,DNAのladderingは起こっていないので,ピコリン酸は後期のapoptotic eventsを誘導している訳ではなく,ピコリン酸によるマクロファージ殺菌活性の増強は,caspase 3によるcaspase-activated deoxyribonucleaseの活性化より上流のシグナル伝達系に関係したものと考えられる。次年度は,変異導入cPLA_2-GFPを細胞内に発現したマクロファージを供試して,caspase 3, 8, 9やBax, Bcl, ミトコンドリア,cytochrome C, Apaf-1を介するapoptotic signaling pathwayとcPLA_2活性化のsignaling pathwayとのcross-talkのプロフィールを共焦点レーザースキャン法で検討する予定である。
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