2009 Fiscal Year Annual Research Report
新規低分子化合物による抗HIV-1中和抗体感受性の特異的増強とメカニズムの解析
Project/Area Number |
20591206
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉村 和久 Kumamoto University, エイズ学研究センター, 講師 (60315306)
|
Keywords | HIV-1 / 中和抗体 / 低分子化合物 / NBD-556 / エンベロープ / 中和抗体増強剤 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、平成21年度も我々はHIV-1エンベロープの立体構造を変化させて、中和抗体の感受性を増強させる低分子化合物(NBD-556)に関する研究を行った。NBD-556がどのようにウイルスのgp120と結合しているかを予測するため、我々が新規に樹立したin vitro耐性誘導システムを用いて、化合物に耐性のウイルスを誘導した。PM1/CCR5細胞にIIIBウイルスを感染させ、NBD-556またはsCD4をそれぞれ1μM及び1μg/ml存在下に培養を開始する。NBD-556は50μM (21 passage)、sCD4は20μg/ml (5 passage)まで培養を続け、パッセージごとにエンベロープのシークエンスを行い、それぞれの変異部位を同定した。また、耐性変異アミノ酸を持ったpseudovirusを作製し、NBD-556とsCD4に対する感受性を野生株のエンベロープを持つものと比較検討した。その結果、NBD-556耐性ウイルスは、sCD4耐性変異と非常に近い場所、すなわちCD4 cavityといわれるCD4結合部位に集中してみられることが分かった。このことは、V3に対する中和抗体の抗ウイルス効果を増強するような立体構造変化を引き起こす機能を持つ分子量350前後の低分子化合物NBD-556が、in vitro耐性誘導実験の結果sCD4の結合部位に近い場所に結合していることを意味している。これらの結果は、NBDのどの部位が立体構造の変化に強く関与しているかを知る上で、非常に大きな知見となった。現在進行中であるNBD-556類似の構造で、より活性の強いNBD compoundの誘導体の設計を行う上で大変有用な情報となることは確かである。事実、現在10以上のNBD誘導体を今回の結果をもとに合成している。今後、これらの中からより低濃度で、強力に中和抗体の感受性を増強し、細胞毒性も低いものを追求していく。
|