2010 Fiscal Year Annual Research Report
新規低分子化合物による抗HIV‐1中和抗体感受性の特異的増強とメカニズムの解析
Project/Area Number |
20591206
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉村 和久 熊本大学, エイズ学研究センター, 准教授 (60315306)
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Keywords | HIV-1 / 中和抗体 / 低分子化合物 / NBD-556 / gp120 / 中和抗体増強剤 |
Research Abstract |
これまで我々は、低分子化合物NBD-556がgp120の立体構造を大きく変化させ、中和抗体の反応性を増強することを証明し、この化合物が非常に有望なHIVのエンベロープ構造変化誘導物質であることを示した。また、NBD-556のin vitro耐性誘導により、その結合部位がsCD4の場所に非常に近いこともわかった。そこで、本年度は実際にどのような抗体の中和感受性を増強するのかを各種の中和抗体と感染症例の血清から精製したIgGを用いて検討した。治療用抗HIV-1抗体として開発が進んでいる広範囲ウイルス中和抗体KD-247(坑V3抗体)や熊本大学エイズ学研究センター(松下プロジェクト研究室)で樹立された4E9C(CD4i抗体)を用いて、NBD-556存在下における中和感受性の増強効果を検討した。その結果、NBD-556非存在下では、全く中和しなかった両抗体が、NBD-556を5μM加えただけで、IC_<50>がそれぞれKD-247は10μg/ml、4E9Cは20μ9/mlで中和するようになった。次に、我々が分離した臨床ウイルスの中で、同じ症例から精製した血清IgGに対して中和抵抗性のウイルスでかつ、NBD-556存在下では中和されるようなウイルスがあるかどうかを調べた。今回使用した臨床分離ウイルスは、同時期の血清IgGが200μg/ml存在していても中和されなかった。しかしNBD-556が4μM存在すれば、血清IgG炉20μg/mlでも50%以上の抑制が見られるようになった。このことは、ウイルスと同時期に存在する血中の抗体は、中和エピトープが変異しているために中和できなくなっているのではなく、エンベロープの三量体構造の中にエピトープが隠されているためであることを示している。これらの成果をまとめて報告した(Yoshimura et al., JV, 2010, 84 : 7558-68)。
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