2010 Fiscal Year Annual Research Report
リソゾーム病の神経病変を標的とした新規骨髄移植法の開発
Project/Area Number |
20591234
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
三宅 紀子 日本医科大学, 医学部, テクニカルサポートスタッフ (00421206)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 弘一 日本医科大学, 医学部, 准教授 (90267211)
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Keywords | HoxB4 / 異染性白質ジストロフィー / 骨髄移植 / 脳神経細胞 / レトロウイルスベクター |
Research Abstract |
リソゾーム酵素欠損症では、一般的に酵素補充療法の有効性が期待できるが神経変性を伴う疾患に対しては血液脳関門(BBB)の存在が大きな障害となり、有効な治療戦略が立てられていない。本研究では脳全体の広範な神経変性を伴う、異染性白質ジストロフィー(MLD)及びクラッベ病をモデルとして、脳神経組織に対する新しい骨髄移植法、およびそれを応用した遺伝子治療の開発を目的とする。 新規骨髄移植法として、HOXB4を骨髄細胞に導入し移植実験を行った。HOXB4を導入した骨髄ではコントロールに比べ高い生着率を示した。移植後8ヶ月にて脳を解析したところ、HOXB4移植マウスではコントロールに比べ多くのGFP陽性細胞を認められた。GFP陽性細胞はほとんどがマイクログリアに分化していたがHOXB4移植マウスにおいては、オリゴデンドロサイトにも分化されていることが確認された。治療効果としては、Alcian blueによるスルファチドの染色及び生化学的定量において、HOXB4移植MLDマウスはコントロールと比べてスルファチドの減少を認め、さらに行動実験においても、神経症状の改善が認められた。このことより骨髄細胞にHoxB4を遺伝子導入し発現させることにより、脳内により多くの移植細胞が確認され、ASA欠損MLDマウスにおいてスルファチドの減少と、行動実験において有意な改善を認めた。より多くの移植細胞が脳内に確認されたのはHoxB4発現により脳内にて増殖されたためと推測された。また、HoxB4を発現させることにより、オリゴデンドロサイトへの分化が確認され、HoxB4遺伝子発現骨髄細胞移植はMLD、Krabbe病、多発性硬化症などの脱髄性疾患の治療に有用と考えられた。本研究では治療実験中に癌化等の副作用は認められなかったが、今後臨床応用に向けて、慎重な副作用、安全性の検討を行っていく必要があると思われる。
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Research Products
(6 results)