2010 Fiscal Year Annual Research Report
胎児期化学物質曝露による中枢神経形成期の神経機能と小児期の行動への影響
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20591237
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
上野 晋 産業医科大学, 医学部, 准教授 (00279324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笛田 由紀子 産業医科大学, 産業保健学部, 助教 (10132482)
由比 友顕 産業医科大学, 医学部, 助教 (60330982)
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Keywords | フロン代替物質 / 1-ブロモプロパン / 胎児期曝露 / 次世代影響 / 神経行動学的表現型 / オープンフィールド試験 / 海馬神経回路 / 受動的回避試験 |
Research Abstract |
洗浄溶剤として汎用されているフロン代替物質の1-ブロモプロパン(以下1BP)について本年度も引き続き1BPの胎仔期曝露モデル動物について電気生理学的検討ならびに神経行動学的表現型の検討を行った。Wistar系のラットを交配させ、妊娠を確認した翌日から出産前日までの20日間、吸入曝露チャンバーを用いて1BPを濃度700ppmにて吸入曝露(6時間/日)させ(対照群として空気曝露を行った)、得られた仔ラットを胎仔期曝露モデルとして用いた。電気生理学的解析からは、一昨年度に生後14日齢の海馬における刺激応答性が対照群と比べ1BP胎仔期曝露群で有意に増強していたことを報告したが、更に詳細に検討したところ、生後15日齢において認められる海馬刺激応答性の左右差(対照群では左側海馬<右側海馬)が、1BP胎仔期曝露群では左側海馬での刺激応答性の増強が原因と考えられる左右差の消失が出現していた。神経行動学的表現型については生後6週齢にて受動的回避試験を行い学習・記憶機能の評価したところ、対照群では出現する24時間後の進入潜時の延長が1BP胎仔期曝露群では出現しなかった。さらに昨年度の4週齢での試行に続き、生後12週齢で再びオープンフィールド試験を行ったところ、総行動距離ならびに時間に有意な減少が認められた。これが不安様行動の増加に伴うものではないことが13週齢で試行した高架式十字迷路試験により確認された。以上の結果から、1BP胎仔期曝露が幼弱期の脳の左右差に影響を及ぼす可能性があること、加えて若年期の認知機能、さらには成人期での探索行動量に影響を及ぼすなど次世代にわたる多彩な神経学的影響を生じる可能性があることが示唆された。
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