2009 Fiscal Year Annual Research Report
原発性免疫不全症における復帰変異による体細胞モザイクの意義と分子生物学的基盤
Project/Area Number |
20591247
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
和田 泰三 Kanazawa University, 附属病院, 講師 (30313646)
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Keywords | 原発性免疫不全症 / 遺伝子変異 / reversion / X連鎖重症複合免疫不全症 |
Research Abstract |
本年度は、遺伝子変異のreversion(復帰変異)を認めたX連鎖重症複合免疫不全症患児から樹立したT細胞株を用いた実験を行った。X連鎖重症複合免疫不全症では通常T細胞が欠損するため、これまでT細胞株を樹立することは不可能と考えられていた。しかし患児では、特異なスプライス変異によりγc鎖発現の低下した異常自己T細胞が出現していたため、ヘルペスウイルスサイミリを用いたT細胞株の作製に成功した。限界希釈法によるクローニングを行い、もとの変異を有したγc鎖発現の低下したT細胞株と復帰変異を有するγc鎖発現の回復したT細胞株を得ることができた。フローサイトメトリーによりそれぞれのT細胞株の表面抗原発現を解析したところ、いずれもCD8陽性のT細胞で活性化抗原等には差は認められなかった。現在、復帰変異の生体内での役割が明らかにするため、同細胞株を用いてIL-2やIL-4などサイトカイン刺激に対するJak3やSTAT5のリン酸化の違いをウエスタンブロットやフローサイトメトリー法により検討している。またもとの変異を有したT細胞株を種々の条件で培養しているが、現在のところ復帰変異の出現は認めていない。さらに本年度は、患児の弟が出生し、臍帯血を解析する機会を得た。次子では同じγc鎖の遺伝子変異を有しているにもかかわらず、異常自己T細胞や復帰変異を有したT細胞の出現は認めなかった。復帰変異の出現を考える上で貴重な症例と考えられた。
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