2010 Fiscal Year Annual Research Report
原発性免疫不全症における復帰変異による体細胞モザイクの意義と分子生物学的基盤
Project/Area Number |
20591247
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
和田 泰三 金沢大学, 附属病院, 講師 (30313646)
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Keywords | 原発性免疫不全症 / 遺伝子変異 / reversion / X連鎖重症複合免疫不全症 |
Research Abstract |
X連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)は、インターロイキン-2/-4/-7/-9/-15/-21の受容体として共用されるγc鎖の異常に起因する。T細胞とNK細胞の発生が障害されるため、末梢血に両細胞を欠くのが特徴である。以前、我々が報告した復帰変異(reversion)を有する非典型的X-SCID乳児例(Blood 2008)では、γc鎖遺伝子のスプライス異常のため一部正常mRNAが作られ、γc鎖発現の低下した異常な自己T細胞とNK細胞が認められた。これら異常細胞の存在を背景に、患児では皮膚浸潤T細胞に復帰変異が生じ体細胞モザイクとなっていた。今回、我々は、NK細胞を有する別の非典型的X-SCID症例を解析する機会を得た。キメラ解析により母親由来の細胞の混入は否定され、患児のNK細胞は自己由来と考えられた。顆粒球由来DNAを用いた解析では、exon5の先頭に1塩基欠損を認め、フレームシフトによる早期翻訳停止が予想された。そこでNK細胞を磁気ビーズにより分離し解析したが、同変異のみ認められ復帰変異は検出されなかった。mRNAを用いた解析より、患児にみられた1塩基欠損は単純なフレームシフトではなくスプライス異常を惹起し、余分な33塩基対を含む異常mRNAが作られることが判明した。原発性免疫不全症の患児が非典型的症状を示した場合、必ずしも復帰変異がみられるわけではないが、その頻度は予想以上に高いことが知られており、常にその存在に注意する必要があると考えられた。
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