2010 Fiscal Year Annual Research Report
抗体産生不全症における新たな病態の解明と臨床像との関連
Project/Area Number |
20591250
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
金子 英雄 岐阜大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (80293554)
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Keywords | 高IgM症候群 / AID / 常染色体優性遺伝 / 記憶B細胞 / 体細胞突然変異 |
Research Abstract |
高IgM症候群は、いくつかの病態からなる。そのうち、伴性劣性の遺伝形式を有するCD40L遺伝子の異常によるI型と常染色体劣性の遺伝形式をとるactivation-induced cytidine deaminase(AID)遺伝子の異常によるII型が主なものである。我々は、高IgM症候群のII型について、AIDのC-末のR190X変異が、dominant negative変異として作用するため、常染色体優性の遺伝形式をとることを報告してきた。今回、R190X変異を有する母と二人の子供について、検討をおこなった。母の免疫グロブリン値はIgMが高値でありIgG, IgA, IgEは低値を示し、典型的な高IgM免疫不全症のパターンを示した。麻疹罹患時に、抗麻疹IgM抗体が上昇の後、抗麻疹IgG抗体が陽性になった。しかし、その後IgG抗体は消失し、IgM抗体は持続的に陽性を示すという特異なパターンをとっている。しかし、同一の遺伝子変異を有するにも関わらず、二人の子供の免疫グロブリン値は、正常範囲内であった。麻疹のワクチン接種後、抗麻疹IgG抗体は持続的に陽性を示しており、正常な反応を示している。IgM重鎖遺伝子の体細胞突然変異の割合は、母子ともに、やや健常人より低下傾向を示したが、保たれていた。以上の結果は、R190X変異のみでは高IgM免疫不全症のパターンをとらないことを示唆している。高IgM免疫不全症のパターンになるにはAID以外の他の遺伝的要因の関与または、環境要因の関与が考えられる。また、一旦、IgGにクラススイッチした記憶B細胞の維持には、AIDの働きが関与していることが示唆された。以上より、本症例の検討を通してAIDの新たな機能が示唆された。
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Research Products
(8 results)