2010 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子発現パターンに基づく急性白血病のヒエラルキーの解明
Project/Area Number |
20591251
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
谷ヶ崎 博 日本大学, 医学部, 助教 (90378141)
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Keywords | 急性巨核芽球性白血病 / 転写因子 / ヒエラルキー |
Research Abstract |
【背景】急性巨核芽球性白血病(AMKL)はCD41,CD42などの血小板関連抗原の発現が特徴的とされている。自験例45例の検討ではAMKLの芽球は形態学的に未分化型、細胞質にブレブ形成をみる中間型、成熟傾向のある異常巨核球の増加を伴う成熟型に細分類可能であった。また、ダウン症関連AMKL(DS-AMKL)では好塩基性の強い細胞質を有し、赤芽球に類似した芽球がみられた。これらの形態分類が芽球の分化段階を反映しているのかを検討するため、巨核球、赤血球の分化に関連する11種類の転写因子の発現量を解析した。【対象/方法】DS-AMKL:11例および非DS-AMKL:8例。患者骨髄あるいは末梢血からFACSを用いて芽球のみを分離し、RNAを抽出した。RT-PCR法でcDNAを合成した後、real-time PCR法により、GATA1、GATA2、FOG-1、NFE2、SCL、PU.1、C/EBPα、c-mp1、Epo-R、CD41b、βglobinの発現量を測定し、GAPDH発現量との比を解析した。【結果】DS-AMKLは非DS-AMKLと比較してGATA1およびβglobinが有意に高値であった。また、中間型は未分化型と比較してCD41bが有意に低値であり、GATA2,C/ZBPαが有意に高値であった。成熟型はその他と比較してGATA1,NFE2,Epo-Rが有意に低値であった。【結論】未分化型および中間型ではGATA1、GATA2に加えてNFE2などの巨核球関連因子とEpo-Rなどの赤芽球関連因子の発現が確認され,芽球はmegakaryo-erythrocyte progenitor由来と考えられた。とりわけDS-AMKLでは、成熟した赤芽球に発現するβglobinの発現量が有意に高く、より赤血球系に分化した芽球であることが推測された。一方で、非DS-AMKLではEpo-Rの発現量が有意に低下しており、より純粋な巨核球系芽球であると考えられた。本研究により、AMKLの中にも分化段階のヒエラルキーが存在することを分子生物学的に証明することができた。本年度はこれらの確認の追加実験及び論文の作成を行い、現在論文投稿中である。
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