2009 Fiscal Year Annual Research Report
第VIII因子活性増強抗体を用いた血友病A新規抗体療法に関する基礎的研究
Project/Area Number |
20591259
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
嶋 緑倫 Nara Medical University, 医学部, 教授 (30162663)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 優 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (50405388)
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Keywords | 血友病A / 第VIII因子 / 第VIII因子活性 / 活性化 / 抗体療法 |
Research Abstract |
第VIII因子活性増強抗体を各種抗第VIII因子モノクローナル抗体からスクリーニングして得た。本抗体の活性化第X因子反応系における各種リガンドとの作用、トロンビンの作用などについて検討した。凝固1段法による第VIII因子活性測定で活性を測定したところ、約1.5倍に活性を増強することが判明した。また、増強効果は抗体の濃度依存性にみられた。抗体の第VIII因子増強効果をさらに検討するために第X因子活性化反応およびトロンビン活性化作用に注目して検討した。内因性第X因子生成反応は本抗体の添加により1.4倍増強した。また、トロンビン生成反応では2.5倍に増強した。本抗体の第VIII因子結合部位さらに抗第VIII因子抑制抗体の存在下についても検討した。本抗体はA2ドメインにエピトープを有することが判明した。第VIII因子の各ドメインを認識する4抗体について検討したが、抗体の第VIII因子増強効果はこれらの抗体存在下でも発現した。 血友病の補充療法は高純度の製剤の導入により進歩しつつあるが、頻回の投与が必要である。本活性増強作用は血友病補充療法の止血効果を増強すること、さらに、出血予防効果を1.5倍延長することが可能になる。したがって本抗体により、小児領域における中心的な治療である定期補充療法の投与回数を減少させることができる点きわめて意義が高いと思われる。また、第VIII因子活性を抑制する抗体存在下でも活性増強作用が発現したことは、インヒビター保有症例に止血療法にも有用であることが示唆される。インヒビター保有例の血友病患者の止血管理は極めて困難である状況から、本研究成果は新たな止血療法の開発にも応用が期待される。
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