2010 Fiscal Year Annual Research Report
アルポート症候群の分子病態の解明と新規治療法の開発に向けた基礎的研究
Project/Area Number |
20591273
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小林 武弘 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (90311670)
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Keywords | アルポート症候群 / IV型コラーゲン / ヘテロ三量体 / HSP47 / NClドメイン / コラーゲンドメイン / 変異 |
Research Abstract |
コラーゲン特異的分子シャペロンであるheat shock protein 47(HSP47)のIV型コラーゲンα3、α4、α5鎖におけるヘテロ三量体形成への関与について前年に引き続き解析した。α345細胞(α3(IV),α4(IV),α5(IV)鎖を発現するHEK293細胞)においてHSP47を過剰発現させてもα3,α4,α5鎖のヘテロ三量体形成に変化がなかった。一方で、NClドメインにCl638Y変異を有するα5鎖(この変異はα3,α4鎖との三量体形成能を減弱させる)では、HSP47の過剰により、細胞中でのヘテロ三量体形成に変化は見られなかったが、細胞から分泌されるヘテロ三量体が減少し、HSP47が異常コラーゲンの分泌を抑制することが示唆された。 アルポート症候群で報告のある変異をコラーゲンドメインに導入した12種類のα5(IV)鎖を作成し、それぞれのヘテロ三量体形成について解析した。9種類のα5(IV)鎖ではヘテロ三量体形成能が減弱していたが、3種類では野生型と差異がなかった。複合体形成のパターンと臨床症状との相関は明らかでなかった。複合体形成能が野生型と同等であった3種類の変異α5(IV)鎖を含むヘテロ三量体におけるプロテアーゼ(ペプシン、トリプシン)抵抗性は野生型と差異がなかった。コラゲナーゼなどコラーゲン特異プロテアーゼに対する抵抗性について更なる検討が必要である。また、コラーゲンドメインに変異を有するα5(IV)鎖の一部においても、HSP47の過剰発現がヘテロ三量体の分泌を抑制した。 以上のことから、アルポート症候群の主たる分子病態は、IV型コラーゲンα3、α4、α5鎖のヘテロ三量体形成不全と考えられた。また、異常なヘテロ三量体の形成の抑制にHSP47が重要な働きをしていることが推察された。
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Research Products
(2 results)