2009 Fiscal Year Annual Research Report
腎糸球体の再生過程における糸球体内皮細胞の役割と再生促進因子の解明
Project/Area Number |
20591283
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
川崎 幸彦 Fukushima Medical University, 医学部, 准教授 (00305369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細矢 光亮 公立大学法人福島県立医科大学, 医学部, 教授 (80192318)
橋本 浩一 公立大学法人福島県立医科大学, 医学部, 講師 (50322342)
陶山 和秀 公立大学法人福島県立医科大学, 医学部, 助教 (90423798)
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Keywords | 糸球体内皮細胞 / 再生 / リポポリザカライド |
Research Abstract |
【背景】血管新生増殖因子であるVascular endothelial growth factor(VEGF)は、多くの慢性臓器疾患に対して実質再生を促し、線維化への進展を予防する因子と考えられている。腎組織においても障害時の修復因子と考えられており、その受容体を介して糸球体内皮細胞や上皮細胞の抗アポトーシス作用、内皮細胞障害時の血管新生およびメサンギウム細胞基質の増生抑制に働くことが報告されている。【目的】Lipopolysaccharide(LPS)と志賀毒素(Shiga-like toxin2 ; Stx2)をマウス腹腔内へ投与することで作製した溶血性尿毒症症候群(HUS)の動物モデルを使用し、腎糸球体の組織学的変化および血管新生増殖因子(VEGF)の発現を経時的に観察する。【対象と方法】8週齢のC57BL/6マウスを3群に分け、LPS300μg/kg+Stx2 225ng/kg(A群)、LPS300μg/kg+Stx 50ng/kg(B群)、LPS900μg/kg(C群)を腹腔内に単回投与した。A群は腹腔内投与後、6、12、24、48、72時間後に、B群及びC群では、腹腔内投与後、6、12、24時間、3、7、14、28日後に採血と腎臓を摘出した。血中VEGFと腎組織を糸球体内固有細胞マーカーやVEGFに対する抗マウスモノクローナル抗体を用いた免疫染色により内皮細胞を中心とした糸球体障害からの修復過程を経時的に解析した。【結果】A群では、腹腔内投与後6時間より糸球体内皮細胞の変性や係蹄壁の拡大・断裂、メサンギウム融解が起こり、72時間後には著しい尿細管腔の拡大と尿細管上皮の変性・脱落が認められた。96時間後には全例で死亡した。B群及びC群では、病初期より糸球体内皮細胞の腫大や係蹄壁の拡大、メサンギウム細胞の変性、一部に融解像が認められ、メサンギウム増殖性変化が遷延した。時間の経過とともに内皮細胞の修復、係蹄の再疎通像が認められた。VEGFは、12時間後から28日後にかけて上皮細胞やメサンギウム領域にかけて発現が増強した。A群では、B群に比して糸球体障害の程度が強く、メサンギウム組織の増殖と内皮細胞障害が著しく、VEGFの発現は減弱していた。【考察】腎糸球体障害からの修復過程において、血管新生増殖因子であるVEGFの発現が増強しており、組織修復への重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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