2010 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚有棘細胞癌におけるRafキナーゼ抑制蛋白の抗腫瘍効果解析と,治療的応用の検討
Project/Area Number |
20591313
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
六戸 大樹 弘前大学, 医学部附属病院, 助手 (50436036)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 創 弘前大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (90281922)
松崎 康司 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (50322946)
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Keywords | 癌 / シグナル伝達 / 分子生物学 / MAPキナーゼ / RNAi / 細胞増殖 |
Research Abstract |
平成22年度は、まずはRKIPが癌細胞の浸潤能に与える影響を検討した。SCC細胞株でRKIPを増加させ、基底膜モデルのマトリゲルに対する浸潤能を検討したところ、RKIPを増加させても浸潤能は抑制されなかった。細胞内で増加させたRKIPがMEKと結合する性質を維持していることを示すため、免疫沈降法を行ったところRKIPとMEKとの結合性は証明された。さらに、EGF刺激によりMEKとRKIPの結合が解離しており、本来の結合と解離の性質は有していることが示された。 53症例のSCC標本を用いて、免疫組織学的にRKIPとp-ERK(リン酸化ERK)の染色性を検討した。その結果、RKIPとp-ERK陽性細胞の分布にreciprocalな関連性は見出されず、また、11症例のリンパ節転移巣と原発巣間での比較も行ったが、転移巣と原発巣の間にRKIP、p-ERKの染色性の有意な変化は認められなかった。しかし、個々の症例を検討したところ、11症例中3症例において、転移巣でのRKIP減少とp-ERK増強が認められ、症例によってはRKIPのERK抑制効果が残存している可能性が示唆された。さらに、比較的悪性度の低いとされる高分化型SCCでは、RKIP発現が多く、特に癌真珠と呼ばれる角化胞巣の周囲で強染色された。一方、悪性度が高い未分化型SCCでは、腫瘍細胞におけるRKIPの発現はごく弱いか、まったく染色されなかった。これらの結果は、正常表皮におけるRKIPの発現態度(分化つまり角化する前の基底細胞では照IP発現が弱く、逆に角化が進行した有棘層、顆粒層ではRKIP発現が増強する)と一致するものであった。SCCにおいて、RKIPは分化能に深く関与しており、高分化のSCCほどRKIP発現が多いことが統計学的に確認され、RKIP発現の評価によりSCCの悪性度の推測ができる可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)