2008 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内導入ペプチドを用いた難治性皮膚疾患に対する治療薬開発の基礎研究
Project/Area Number |
20591316
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
柴垣 直孝 University of Yamanashi, 大学院・医学工学総合研究部, 准教授 (40262662)
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Keywords | 皮膚腫瘍 / タンパク導入 / 分指標的療法 |
Research Abstract |
【背景と目的】担癌宿主において癌局所でのSTAT3の活性化が癌の進展に深く関与している事が多数報告されている。また最近の報告によると癌局所での活性化STAT3(pSTAT3)は、抗原提示細胞とT細胞両者に作用し免疫抑制を誘導させる事で癌免疫療法の効果を阻害している事が明らかとなった。しかしながらin vivoでpSTAT3阻害効果を有する薬剤を腫瘍部に投与し抗腫瘍効果を検討した報告は殆どない。過去我々はprotein-transduction domain(PTD)というpolypeptideによるタンパク質細胞内導入法を用いてin vitro及びin vivoでの様々な細胞内への導入効果を検討しその安全性と高い導入効率を報告してきた。我々はこの技術を利用して癌局所(in vivo)での使用が可能なpSTAT3に対する分子標的薬の開発に成功しこの阻害薬によるin vitro,in vivoでの抗腫瘍効果について検討した。 【方法】STAT3のTADに直接結合しその活性化阻害作用を有するGRIM19分子と、細胞内導入効率の最も高いR9-PTDを融合させたリコンビナントタンパク(rR9-GRIM19)を作製、精製した。これをpSTAT3発現細胞株(vSrc 3T3, A20, B16)、非発現細胞株(3T3, EG.7)に導入しin vitroでの抗腫瘍効果、及び腫瘍塊に直接接種した場合の抗腫瘍効果について検討した。 【結果】in vitroにおいてrR9-GRIM19は濃度依存性にDNA(binding site)に対するpSTAT3の直接的結合阻害効果を示し、これをpSTAT3発現株に導入させる、転写阻害、増殖抑制効果が認められた。またin vivoにてA20腫瘍塊にrR9-GRIM19を3日間連続接種(day9,10,11)すると腫瘍の完全消失を認めた。このマウスはA20のrechallengeで再拒絶を示しかつCTL活性が確認された。一方nude miceを用いたA20腫瘍塊への同様の接種では拒絶効果が認められなかった。 【考察】rR9-GRIM19を腫瘍塊に接種した場合の抗腫瘍効果は癌局所における免疫抑制回避として機能していることを示唆しており、癌免疫療法の新たなadjuvant剤として期待できる。
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