2010 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内導入ペプチドを用いた難治性皮膚疾患に対する治療薬開発の基礎研究
Project/Area Number |
20591316
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
柴垣 直孝 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 准教授 (40262662)
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Keywords | タンパク質細胞内導入 / 分子標的薬 / 癌免疫療法 / STAT3阻害薬 / 癌ワクチン |
Research Abstract |
多くの癌細胞で恒常的に活性化されているSTAT3のシグナル経路を阻害することは、増殖抑制、アポトーシス誘導、血管新生阻害、免疫抑制の是正を誘導させ、腫瘍微小環境の改善が期待できる。我々は、腫瘍局所のSTAT3シグナルを阻害する分子標的薬を開発し治療応用することを目標に、R9-GRIM19という融合タンパクを作成した。細胞内導入方法としてR9-protein transduction domain(polyarginine)を使用した。この方法は、in vitro, in vivo両者において細胞内導入効率が極めて高いと共に、正常組織、正常細胞に対する副反応がほとんどないことが特徴の新しい導入法である。In vitroでは、STAT3持続活性型細胞株にR9-GRIM19を導入すると、STAT3転写活性を阻害すること、その結果増殖抑制、アポトーシス誘導が誘導されることを明らかにした。一方in vivoでは、このR9-GRIM19を単独でマウスSTAT3活性型腫瘍塊内に接種すると完全拒絶を始めとする有意な抗腫瘍効果が認められた。この機序を解析したところ、抑制型免疫細胞が減少すると共に炎症型免疫反応が誘導されるようになることを明らかにした。即ち、この抗腫瘍効果の機序は、本来宿主が持っている自然免疫と獲得免疫を増強させることで認められるようになることが明らかとなった。また、このR9-GRIM19の腫瘍内接種とワクチン療法を組み合わせると、抗腫瘍効果がさらに増強する。従って、今後担癌宿主に対する癌免疫療法において、このSTAT3 inhibitorであるR9-GRIM19の使用は必須となるものと思われる。
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