2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20591317
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
原田 和俊 University of Yamanashi, 医学部附属病院, 講師 (20324197)
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Keywords | 皮膚腫瘍 / 発癌 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
慢性炎症は悪性腫瘍の発生母地として重要であることは、100年以上前から記載されている。しかし、その分子メカニズムはまだ不明な点が多く、詳細な解析が始まったばかりである。本研究では慢性炎症と発癌を仲介する因子として、変異導入酵素AIDを候補に挙げた。AIDは免疫グロブリン遺伝子に変異を導入し、抗体の多様性の獲得に不可欠な酵素である。しかし、その厳密な発現のコントロールが破たんし、異所性に発現した場合には、AIDはDNAに変異を刻み込み、発癌の原因となる可能性がある。AIDは消化管上皮細胞に起炎症性サイトカインが働くと、発現することが解明されており、表皮細胞でも、同様にAIDの発現が誘導され、持続的なAIDの発現は遺伝子に変異を導入する可能性がある。そこで、本研究では、紫外線による前癌病変である、日光角化症、有棘細胞癌の発生母地となる慢性炎症病変である、扁平苔癬、萎縮性硬化性苔癬、DLE、さらに、有棘細胞癌、基底細胞癌、ボーエン病において、AIDの発現を免疫組織学的に検討した。その結果、日光角化症、扁平苔癬、萎縮性硬化性苔癬、有棘細胞癌、ボーエン病でAIDを発現する角化細胞が認められた。特異、ボーエン病ではでは陽性細胞が塊状に存在していた。一方、基底細胞癌では陽性細胞は検出できなかった。このことから、紫外線、自己免疫、持続的な感染などにより惹起された慢性炎症により異所性に発現したAIDが遺伝子に変異を導入し、有棘細胞癌を誘発している可能性が示唆された。次年度では培養細胞株の培養液中に、IFN-gやTNF-aなどの起炎症性サイトカインを添加し、AIDの発現が誘導されるかどうかを検討する予定である。
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