2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20591317
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
原田 和俊 山梨大学, 医学部・附属病院, 講師 (20324197)
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Keywords | 皮膚腫瘍 / 発癌 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
慢性炎症は悪性腫瘍の発生母地として重要な位置を占めているが、その分子メカニズムはまだ不明な点が多い。本研究では慢性炎症と発癌を仲介する因子として、変異導入酵素AID(Activation Induced Deaminase)を候補に挙げた。AIDはリンパ球のみに特異的に発現し、免疫グロブリン遺伝子に変異を導入することで、抗体の多様性の獲得に寄与する。しかし、その厳密な時間的、空間的な発現のコントロールが破たんした場合、この酵素は異所性に発現し、上皮細胞のゲノムに変異を刻み込み、その結果、癌を引き起こす。皮膚表皮細胞において、異所性にAIDの発現が誘導され、持続的なAIDの発現は遺伝子に変異を導入する可能性がある。そこで、本研究では、紫外線による前癌病変である、日光角化症、有棘細胞癌の発生母地となる慢性炎症病変である、扁平苔癬、萎縮性硬化性苔癬、DLE、さらに、有棘細胞癌、基底細胞癌、ボーエン病において、AIDの発現を免疫組織学的に検討した。その結果、日光角化症、扁平苔癬、萎縮性硬化性苔癬、有棘細胞癌、ボーエン病でAIDを発現する角化細胞が認められた。次にin vitroでサイトカイン添加によりAIDの発現が認められるかどうかを用いて検討した。起炎症性サイトカインであるTNF-aを表皮細胞株の培養液中に加えたところ、濃度依存性にAIDの発現が誘導された。次に、実際に表皮角化細胞に発現したAIDが細胞のDNAに変異を導入するかどうかを検討する為、AIDのcDNAをクローニングし、レトロウイルスベクターを用いてAIDを強制発現させた、表皮細胞株の樹立を試みた。ウエスタンブロット法で確認したところ、細胞株でAIDの発現が確認できた。今後は、この細胞を長期間培養した後、ゲノムを抽出し、H-Ras、p53などの遺伝子変異をdirect sequenceで確認する予定である。
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Research Products
(2 results)