2008 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚癌の免疫回避機構と腫瘍特異抗原蛋白を用いた免疫療法に関する研究
Project/Area Number |
20591321
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
辻 和英 Okayama University, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (30304356)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩月 啓氏 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (80126797)
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Keywords | CTL / 悪性黒色腫 / 皮膚癌 / ペプチド / 抗腫瘍免疫療法 / 免疫回避機構 / 制御性T細胞 / NY-ESO-1抗原 |
Research Abstract |
蚊刺過敏症や重症型種痘様水癒症では、EBウイルス関連M/T細胞悪性リンパ腫を高率に発症することがわかっている.しかし、現時点では、確立された有効な治療法がなく、治療法の確立が急務である.(Iwatsuki K et al. Arch Dermatol. 2007:142;587-95) 近年、コレステロール抱合疎水化プルラン(CHP)(Ikuta Y, Blood. 2002;99:3717-3724)などの新しい抗原デリバリーシステムとともに外来蛋白で免疫すると、樹状細胞(DC)を介してMHC class Iに抗原が提示されCTLも誘導されることがわかってきた.高率にウイルス関連の皮膚がんを発症する症例に対して、新しい抗原デリバリーシステムを用いてあらかじめワクチンを投与し、ウイルス関連癌の発症を予防し、治療を行うことが最終的な目的である.さらに、ウイルス関連皮膚がん特異的CD8T細胞が効率よく誘導するために、メラノーマなどの他の皮膚がんの免疫回避機構についても検討を行い、ワクチン効果を高める方法を樹立することが目標である。 実際に、NY-ESO-1蛋白(以下ESO/CHP)の感作によって、M-ESO-1特異的CD4陽性ヘルパーT細胞及びCD8陽性CTLの誘導が可能であることがわかっている。私たちは、岡山大学免疫学教室との共同研究で、ESO/CHP蛋白を用いたメラノーマの癌免疫療法(自主臨床治験)を行った。(Cancer Immunity 2007:7:9-19)(Int J Cancer120:2178-84:2007) の結果から、CHPなどの新しい抗原デリバリーシステムを用いた免疫療法によって、腫瘍特異的CD8T細胞を誘導されるが、腫瘍自体の分泌するサイトカイン、制御性T細胞、腫瘍関連マクロファージなどの影響を受けてワクチンの抗腫瘍効果が低下している可能性が高いと考えた. NY-ESO-1陽性悪性黒色腫患者に、CHP結合NY-ESO-1蛋白(ESO/CHP)を投与したところ、4週後に、腫瘍の病変部に一致した水疱形成と腫瘍の周辺に紅暈を認めた(図1)。病理組織学的に、治療開始後にNY-ESO-1陽性腫瘍細胞の細胞死を確認した。また、ELISA法により、NY-ESO-1特異的抗体価の上昇を認めるとともに、血清IFN-γの上昇を確認した。しかし、NY-ESO-1特異的免疫応答の誘導は確認できたにもかかわらず、その後も腫瘍は増大傾向を示した。本症例においては、腫瘍部に形成した水疱内IFN-γの上昇は認めず、IL-10の上昇を認め、CD25陽性foxp3陽性制御性T細胞とCD68陽性マクロファージ(tumor-associated macrophage; TAM)が増加するなど、腫瘍病変部においても強い免疫抑制機構が存在したものと推察された.さらに樹立した腫瘍細胞のメラノーマ細胞株を解析すると腫瘍自体がIL-6などのマクロファージを誘導するサイトカイン(Blood. 2007Sep11Tumor-associated leukemia inhibitory factor and IL-6skew monocyte differentiation into tumor-associated-macrophage-like cells)を産生していることもわかった。これらの成果を(Cancer Immunol Immunother. 2008Oct;57(10):1429-37. Epub2008Mar1.)に発表した。
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Research Products
(1 results)