2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト毛嚢におけるS100A3の脱イミノ化反応の生理的機能とその応用
Project/Area Number |
20591358
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
川田 暁 近畿大学, 医学部, 教授 (90160986)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高原 英成 茨城大学, 農学部, 教授 (30122063)
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Keywords | S100A3 / Ca^<2+>結合蛋白質 / ヒト毛嚢キューテクル / 脱イミノ化 / 結晶化 / X線 / シトルリン残基 |
Research Abstract |
S100A3は、EFハンド型Ca^<2+>結合モチーフとZn^<2+>結合部位を有するS100タンパク質ファミリー(20種類)の一つでありCa^<2+>とZn^<2+>を同時に結合して四量体となる。最近、我々はS100AがPAD3の天然基質であることを見出した。S100A3タンパク質のArg51がPAD3により特異的にシトルリン化されることで、四量体化が効率的に起こり、同時にCa^<2+>とZn^<2+>との親和性が協同的に高まる。このような知見から、S100A3は、毛嚢キューテクル細胞内におけるCa^<2+>要求性PAD酵素活性の制御のみならず、Ca^<2+>/Zn^<2+>ホメオスタシス制御機構にかかわる重要な機能分子であると推察されている。 本年度は、これまでに多量体構造については報告されていないCa^<2+>/Zn^<2+>結合型S100A3の結晶解析を行い、その四量体化機構を原子レベルで明らかにするため、Ca^<2+>とZn^<2+>を結合した四量体の結晶化・構造解析を目指した。Arg51をAlaに変異したS100A3はArg51がシトルリン化した分子と類似の性質を示すことがわかっており、我々はCa^<2+>とZn^<2+>でS100A3-R51Aの結晶化を行った。システインが10残基もあるS100A3蛋白質が沈殿しないためには、還元状態を保つことが重要である。しかし、還元剤であるDTTとZn^<2+>は容易に沈殿を形成してしまう。様々な条件検討を行った結果、Ca^<2+>, Zn^<2+>, DTT共存化で運よく結晶を得ることができた。しかし、X線結晶構造の結果、得られた構造は二量体構造の金属イオン非結合型であった。その構造を詳細に解析していくと、今まで報告されていなかったジスルフィド(SS)結合が二か所にあることが分かった。そのSS結合の重要性を調べるため、我々はSS形成に関与するCysをAlaに変異した変異体を発現・精製し、CDスペクトル測定、イオン滴定による蛍光測定を行うと共にそれらの変異体とPAD3酵素との反応解析、さらに結晶構造解析を行った。その結果、二か所のSS結合はPAD3によるシトルリン化とCa^<2+>結合に重要な役割を果たしていることが示された。
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