2009 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス脆弱性の脳内分子基盤―気分障害と神経細胞新生の関連に着目して―
Project/Area Number |
20591360
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中川 伸 Hokkaido University, 大学病院, 講師 (60360905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 猛 北海道大学, 大学病院, 講師 (70250438)
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Keywords | 抗うつ薬 / 神経幹細胞 / 海馬 / うつ病 / 神経細胞培養 / 気分安定薬 / 細胞周期 / 気分障害 |
Research Abstract |
我々は成体ラットの海馬歯状回から神経幹細胞/神経前駆細胞(ADP)を単離することに成功しており、以下の研究成果を挙げている。1)気分安定薬の増殖、生存、分化への直接効果:海馬において新生される細胞は神経幹細胞から非対称性に細胞分裂する(増殖)、アポトーシスを乗り越えて生存する(抗アポトーシス効果)、ニューロン並びにグリア細胞に細胞系譜を決定する(分化)、といった発達過程を経る。今回、ADPを用いて各々の過程に対する気分安定薬(炭酸リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン、ラモトリギン)の直接効果を検討したところ、(1)炭酸リチウムとバルプロ酸はデキサメタゾンによる増殖抑制を阻止する、(2)炭酸リチウムとカルバマゼピンはニューロンに、バルプロ酸とラモトリギンはグリア細胞により強力に分化させる、(3)総ての気分安定薬が抗アポトーシス効果を示すことが明らかとなった。これらの結果は、各々の薬剤における治療反応性の違いの生物学的背景を示唆するとともに、共通効果である抗アポトーシス効果については更なる検討が重要であると思われた。2)ドパミンの増殖に対する効果とそのメカニズム:難治性うつ病、双極性うつ病に対してドパミン受容体D2アゴニストが有効であるという知見が集積されてきている。このため、ドパミン並びにその受容体のアゴニストのADPへの増殖効果を検討した。RT-PCRによりADPにはD1-5総てのドパミン受容体の遺伝子発現が確認された。また、ドパミン自体はADPの増殖を促進し、D1-like受容体アゴニストであるR(+)SKF38393も増殖を促進させた。一方、ブロモクリプチンなどのD2-like受容体アゴニストは直接的にはADPの増殖に影響を与えなかった。今後、ドパミン、ドパミン受容体アゴニストの抗アポトーシス効果、分化への影響並びに細胞内シグナルカスケードを検討していくこととする。
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