2010 Fiscal Year Annual Research Report
動物モデルを用いたうつ病の病因と治療についての研究
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20591367
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
児玉 匡史 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (80379726)
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Keywords | うつ病 / 神経新生 / 電気けいれん / 強制水泳試験 |
Research Abstract |
うつ病の病因・治療にBDNFといった神経栄養因子が関与していることが明らかとなってきている。神経栄養因子はMAPK/ERK経路、PI3K/Akt経路、およびPLC-γ経路など複数の細胞内情報伝達系を介し効果を及ぼす。本研究では神経栄養因子以降のいずれの系がうつ病に関わるかを明らかとした。臨床上最も有効なうつ病治療である電気けいれん療法の動物モデルを用いた。 まず、ラットへの電気けいれんによるERK、AktあるいはPLC-γのリン酸化を検討した。電気けいれん後、海馬においてはERKおよびAktの一過性のリン酸化亢進を認めた。一方、PLC-γのリン酸化の変化は認めなかった。 続いて、MAPK/ERK経路およびPI3K/Akt経路の抗うつ効果への関与を検討するため、各系の阻害薬の効果を確認した。MAPK阻害薬であるUO126は電気けいれんによるERKリン酸化亢進を抑制したが、PI3K阻害薬であるLY29400およびAkt阻害薬はPI3K/Akt経路のリン酸化亢進を抑制できなかった。そのため、MAPK阻害薬を用いてMAPK/ERK経路の検討を行った。 海馬歯状回での神経新生に対する電気けいれんとMAPK阻害の効果を調べた。電気けいれんにより海馬歯状回の新生細胞数は2倍に増加していたが、UO126の前投与により、その増加は有意に抑制された。 行動学的にMAPK/ERK経路の関与を検討するため、強制水泳試験における電気けいれんとMAPK阻害の効果を検討した。電気けいれんにより強制水泳時の無動時間は、対照群と比較し短縮した、UO126を両側海馬に前投与することにより、電気けいれんによる無動時間の短縮効果は対照群と同等まで抑制された。 これらの結果は、抗うつ効果がMAPK/ERK経路を介していることを示唆し、この系を特異的に活性化する薬物は、新しい抗うつ薬となる可能性を持つと考えられる。
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