2008 Fiscal Year Annual Research Report
神経新生とうつ病治療:末梢血因子と内在性神経幹細胞活性化による新治療ストラテジー
Project/Area Number |
20591373
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
橋本 恵理 Sapporo Medical University, 医学部, 准教授 (30301401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鵜飼 渉 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40381256)
山田 美佐 札幌医科大学, 国立精神・神経センター・老人精神保健部, 研究員 (10384182)
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Keywords | 神経科学 / 脳・神経 / うつ病 / 神経新生 / 抗うつ薬 / BDNF / 末梢血 |
Research Abstract |
抗うつ薬はcAMP-CREBカスケードを刺激し脳由来神経栄養因子BDNF発現を増加させるが、本研究では神経幹細胞から神経細胞への分化促進に寄与する因子としてこのBDNFに着目し、内在性神経幹細胞活性化及び治療反応性の検討に有用な生物学的マーカーとしての応用へと結びつけるための検討を行った。既に確立した血小板培養系を用いて、ラットから採取した血小板に抗うつ薬を添加し、薬剤添加後の血小板からのBDNF遊離を解析した。Sertraline, fluvoxamine, paroxetine等の抗うつ薬処置によりBDNF遊離が認められたが、 BDNF量の経時的変化は薬剤により異なるパターンを示した。経静脈的に抗うつ薬を投与したラットにおいて、血清BDNF濃度は抗うつ薬投与から1〜2時間後に上昇することが確認され、血小板からのBDNF遊離が血清BDNF濃度の上昇に影響していることが示唆された。次に、ヒトにおける抗うつ薬への反応の個体差を検討する目的で、ヒト健常群から採取した血小板を用いてBDNF遊離能の比較検討を行った。同一抗うつ薬に対する血小板からのBDNF遊離には個体差が認められた。うつ病患者において血中BDNF濃度が低下しており、抗うつ薬治療に反応した群ではBDNF濃度の上昇が認められるが非反応群ではBDNF濃度低値は変わらないことが報告されているが、抗うつ薬による血小板からのBDNF遊離能が抗うつ薬の種類や個体によって異なるという本研究の結果は、これらの変化の違いが各個体の抗うつ薬への反応性を表している可能性を示唆するものである。よって、抗うつ薬によるBDNF等の血小板放出因子の遊離能と抗うつ薬治療の臨床効果との相関についての解析を進めることにより、末梢血因子を抗うつ薬治療反応性の予測マーカーとして応用できることが考えられ、今後モデル動物を用いた検討を進める予定である。
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