2008 Fiscal Year Annual Research Report
肝類洞機能を重視した新しい視点に基づく人工肝臓補助システムの開発
Project/Area Number |
20591516
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
藤井 秀樹 University of Yamanashi, 大学院・医学工学総合研究部, 教授 (30181316)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 寛 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 助教 (40322127)
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Keywords | 人工肝臓システム / 肝Kupffer細胞 / 腹腔内感染 / 急性肺障害 / IL-10 / 盲腸結紮穿刺 / 塩化ガドリニウム |
Research Abstract |
人工肝臓システムによるサポートが必要とされる患者が有する肝疾患以外の負荷因子、特に腹腔内膿瘍により発生した敗血症による多臓器不全の1型である急性肺障害も、肝Kupffer細胞を人工肝臓システムに組み込むことにより有効に制御できると考えた。当該年度はこの仮説を証明することを目的とした。まず、腹腔内感染合併する急性肺障害の発症機序にKupffer細胞がいかなる機序で関与しているかについて、ラット腹膜炎モデルを作成し検討した。雄性S.D.種ラットに、Kupffer細胞抑制物質である塩化ガドリニウムを前投与した後、盲腸結紮穿刺(CLP)により腹膜炎を発症させ、その致死率、また、臓器障害の程度を肝臓ならびに肺臓で検討した。また末梢血、肝臓、肺臓の各種メディエーターの動態を検討した。その結果CLP施行7日後の死亡率は生理食塩水を投与したコントロール群で60%であったが、塩化ガドリニウム投与群は12時間以内に全て死亡した。死因は、肺水腫、出血を伴う急性肺障害であり、塩化ガドリニウム投与群で特に障害が強かった。サイトカインのうちTNF-αの発現は塩化ガドリニウム投与による影響を受けなかった。一方、IL-10の発現は、コントロール群ではCLPにより早期に増加が認められたが、塩化ガドリニウム投与群では肝臓、肺臓の両方でIL-10の発現が低下していた。Kupffer細胞の活性化を抑制することはIL-10を抑制し、本来人工肝臓システムの良い適応になるべき術後敗血症患者の生存率を逆に低下させ、さらに急性肺障害を発症させかつ重症化させることが明らかになった。一方で肝Kupffer細胞が肝細胞の増殖、機能維持に有用に作用することも申請者らは明らかにしており、今後、いかなる病態が生じたときに、肝類洞機能を、人工肝臓システムに付加するかを検索することが、次に検索すべき重要な課題である。
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Research Products
(5 results)