2010 Fiscal Year Annual Research Report
食道扁平上皮癌の発生・進展に関与するプロテインフォスファターゼの変異・機能解析
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20591576
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
岩谷 岳 九州大学, 大学病院, 医員 (70405801)
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Keywords | 癌 / 外科 / 遺伝子 |
Research Abstract |
大腸癌で高頻度に変異が報告されている6つのフォスファターゼ遺伝子であるPTPRT, PTPN13, PTPN19, PTPRG, PTPRF, PTPN3に関する食道扁平上皮癌での変異は認められなかった。これはLee JWらのPTPRTの変異解析と同様の結果であった(APMIS,2007)。また、大腸癌で認められたキナーゼ・フォスファターゼ遺伝子の変異の多くは機能的な意義の少ないpassenger変異と考えられている。以上よりわれわれは食道癌に関連するフォスファターゼの同定には変異状態よりも発現状態の検討が重要と考えた。上記6遺伝子の食道癌におけるqRT-PCRによる発現解析では、癌・正常組織間での発現差や、予後との関連も認めなかった。次にわれわれは食道癌におけるフォスファターゼの転写産物の発現状態を網羅的に解析した。食道扁平上皮癌3症例における癌組織と正常組織におけるキナーゼ遺伝子・フォスファターゼ遺伝子のtranscriptome解析を、次世代シークエンサーを用い施行した。解析された262のフォスファターゼ関連遺伝子のうち、正常組織に比し癌組織で有意な発現低下を認めたものは、ACPP, PPP1R3C, DARPP-32, INPP1, LPIN1の5遺伝子であった。ACPP遺伝子に対し、食道扁平上皮癌症例90症例での発現状態を検討すると、ACPP発現は正常組織に比し癌組織で有意に発現低下しており(p<0.0001)、同遺伝子の発現低下が食道癌発生に重要であることが示唆された。反対に癌組織で正常組織に比し5倍以上の有意な発現上昇を認める遺伝子は、PGAM5, DUSP3 ,DUSP6, DUSP10, NUDT1, CDC25B, PTPRHの7遺伝子であった。これらの遺伝子は器質タンパク質の脱リン酸化により腫瘍抑制的な働きをしていることが報告されており、食道癌における各種kinase遺伝子の発現に対する二次的な発現増加と考えられた。本研究で同定されたいずれのフォスファターゼ遺伝子も過去に食道癌、扁平上皮癌における発現異常の報告はなく、食道癌の新規治療のtargetの候補になるものと思われる。
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Research Products
(3 results)