2010 Fiscal Year Annual Research Report
間葉系幹細胞をキャリアー細胞とした消化器癌に対する改良型ウイルス療法の開発
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20591585
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
田川 雅敏 千葉県がんセンター(研究所), がん治療開発グループ, 部長 (20171572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 英昭 東邦大学, 医学部, 教授 (20292691)
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Keywords | 遺伝子治療 / 制限増殖型ウイルス / 食道がん / 間葉系幹細胞 / アポトーシス / 細胞傷害活性 |
Research Abstract |
進行固形がんは有効な治療法に乏しく、その予後不良であり、新規治療法の開発は急務である。そこで本研究では、遺伝子医薬に焦点をあて、その開発に資する基盤研究を行った。遺伝子医薬は従来の化学療法、放射線療とは細胞死の機構が異なる可能性があり、そのため従来の治療法との併用が期待でき、治療選択肢の拡大を図れる利点がある。 本研究では細胞傷害活性が強いアデノウイルスを使用して、その初期転写産物で細胞周期をS期に誘導し、ウイルス増殖に必須である蛋白質の転写因子であるE1領域遺伝子を、腫瘍細胞で高発現の遺伝子の転写制御領域によってその発現をコントロールする組換えウイルスを作製した。当該ウイルスは、正常細胞では傷害を引き起こさなかったが、多くのヒト食道がん細胞で強い細胞傷害活性を示した。しかし、当該ウイルスはタイプ5型ウイルスであるため、そのウイルス受容体であるCAR分子の発現レベルによって感染効率が影響を受ける。事実当該分子の発現が低下した食道がん細胞では、殺細胞効果が減弱していた。そこで、腫瘍細胞でむしろ高発現のCD46分子を受容体とするタイプ35型由来のファイバー・ノブ領域(ウイルス受容体との結合領域)と、タイプ5型の当該領域について、同遺伝子を置換したウイルスを作製した。この改良型ウイルスの細胞傷害性は、従来の5型ウイルスに比較して強い活性を示した。本改良型ウイルスは、タイプ5型ウイルスでは感染しない間葉系幹細胞にも応用可能で、遺伝子導入した同細胞は、その周囲の食道がん細胞に対して抗腫瘍効果を誘導した。さらに、当該ウイルスによる細胞死の誘導におけるアポトーシスの関与を検討したが、カスペース3、8、9のいずれの分子も、ウイルスによる細胞傷害によって活性化されず、同細胞傷害活性は非アポトーシス経路によるものと考えられた。
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