2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドを用いた虚血性脊髄障害治療の理論的基盤の確立
Project/Area Number |
20591652
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
岡嶋 研二 Nagoya City University, 大学院・医学研究科, 教授 (60152295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 直明 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (00309915)
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Keywords | ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド / 虚血性脊髄障害 / 知覚神経 / インスリン様成長因子-I |
Research Abstract |
これまでに、hANPが、ラットの知覚神経刺激作用を有すること、およびhANPを予めラットに投与しておくと脊髄の知覚神経を刺激して、脊髄虚血部位で、インスリン様成長因子-I(IGF-I)産生を促進し、虚血性脊髄障害を軽減することを確認した。これらの所見を基に、虚血性脊髄障害を惹起した後でも、hANPが、IGF-I産生を促進し、神経細胞の再生を惹起することで、運動麻痺の回復を促進する可能性を検討した。まず、知覚神経刺激作用を有するカプサイシンを、虚血性脊髄障害を惹起したラットに、傷害後24時間から、毎日皮下投与し、運動機能の回復の促進と脊髄組織のIGF-I濃度への影響を検討した。その結果、後肢の運動麻痺は、脊髄障害後、7日目から、傷害後14、および21日目では、カプサイシン投与ラットにおいて、カプサイシン非投与ラット(コントロール)に比べて、有意に改善していた。また、脊髄組織IGF-I濃度は、脊髄傷害後21日目では、カプサイシン投与ラットにおいて、カプサイシン非投与ラットに比べて、有意に高値であった。これらの事実は、脊髄障害が発現した後でも、知覚神経刺激による脊髄組織IGF-I濃度の増加は、脊髄の傷害部位の炎症の抑制、神経細胞のアポトーシス抑制、および神経細胞の再生を惹起することで運動麻痺を改善する可能性を強く示している。これらの成果をもとに、今後は、脊髄虚血後に下肢の麻痺が最大となる再灌流後1日から、hANP(1μg/kg/min)を、皮下に埋め込んだ持続注入ミニポンプにより、6日間投与し、再灌流後1日から7日まで、麻痺の程度を毎日観察し、hANP非投与群の麻痺の程度の変化と比較する。また、前述の様に、虚血脊髄障害モデルの腰部脊髄膨大部の神経細胞数も、再灌流後24時間で明らかに減少するが、その後の神経細胞数の変化に対するhANP持続投与の影響も、再灌流後、1, 3.5,および7日に解析する。さらに、再灌流後、1, 3, 5,および7日での脊髄インスリン様成長因子-I濃度に対するhANP投与の影響も解析する。hANP投与が、運動麻痺の回復の促進、および神経細胞数の増加の促進、さらに、インスリン様成長因子-I濃度を増加させることが確認できれば、これらのhANPの作用に対するバニロイド受容体-Iの拮抗物質であるSB366791および抗インスリン様成長因子-I抗体の影響を検討する。また、この動物モデルにおけろhANPによる脊髄障害回復促進効果が、インスリン様成長因子-Iそのものの投与によっても発現するか否かも同時に検討する。インスリン様成長因子-I(0.5mg/kg)は、再灌流後1日から7日まで、6日間、毎日皮下投与し、その後、hANP投与により得られた効果と類似の効果が発現するか否かを解析する必要があることが示唆された。
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Research Products
(11 results)