2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドを用いた虚血性脊髄障害治療の理論的基盤の確立
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20591652
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
岡嶋 研二 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (60152295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 直明 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (00309915)
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Keywords | ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド / 虚血性脊髄障害 / 知覚神経 / インスリン様成長因子-I |
Research Abstract |
これまでに、hANPが、ラットの知覚神経刺激作用を有すること、およびhANPを予めラットに投与しておくと脊髄の知覚神経を刺激して、脊髄虚血部位で、インスリン様成長因子-I(IGF-I)産生を促進し、虚血性脊髄障害を軽減することを確認した。また、脊髄障害が発現した後でも、知覚神経刺激による脊髄組織IGF-I濃度の増加は、脊髄の傷害部位の炎症の抑制、神経細胞のアポトーシス抑制、および神経細胞の再生を惹起することで運動麻痺を改善することを確認した。これらの成果をもとに、脊髄虚血後に下肢の麻痺が最大となる再灌流後1日から、hANP(1μg/kg/min)を、皮下に持続投与し、運動麻痺を改善しうるか否かを検討することが必要である。これまでの所見から、投与したhANPが、脊髄障害部位に到達して、そこで知覚神経を刺激し、IGF-Iを増加させ、炎症を軽減すると予想されていた。しかしながら、皮下で知覚神経を刺激すると、温痛覚伝達系を経て、皮膚局所の刺激情報が、脳幹へ伝達され、自律神経系の活性化を経て、脊髄を含めたすべての組織でIGF-Iを増加させる可能性も考えられた。この可能性を検討するために、ラットにカプサイシンを皮下投与し、迷走神経支配領域である胃と交感神経支配領域である皮膚と脊髄のIGF-I濃度を、正常ラットと副腎摘出ラットにおいて、カプサイシン投与30分後に測定した。その結果、正常ラットでは、胃、皮膚、および脊髄のIGF-I濃度が、対照の1.7~2倍に増加した。しかしながら、副腎摘出ラットでは、胃のIGF-I濃度は、約2倍に増加したが、皮膚、および脊髄のIGF-I濃度の増加は認められなかった。ラットから分離、培養した脊髄後根神経節細胞に、低濃度のエピネフリンを加えると、β2受容体の活性化を経て、CGRPの放出が促進された。以上の事実から、皮下での知覚神経刺激に起因する刺激情報は、温痛覚伝達系を経て、脳幹に伝達され、交感神経系の活性化を経て、副腎髄質からエピネフリンの分泌を促進することで、脊髄のCGRP含有ニューロンのβ2受容体を活性化して、IGF-Iの産生を促進すると考えられた。これらの所見は、今後、hANPの皮下における持続投与による虚血性脊髄障害の治療効果を解析する際に、ラットの温痛覚伝達系の活性化の有無と副腎摘出の治療効果に及ぼす影響をも同時に解析する必要があることを示唆している。
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Research Products
(8 results)