2011 Fiscal Year Annual Research Report
未熟心筋に対する常温下心筋保護の研究:ミトコンドリア保護の重要性とその臨床応用
Project/Area Number |
20591659
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
井村 肇 日本医科大学, 医学部, 准教授 (40281422)
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Keywords | 心筋保護 / 開心術 / 未熟心筋 / ミトコンドリア / 虚血 / 再還流障害 |
Research Abstract |
小児心臓手術において虚血再潅流障害は今なお重大な問題となっている。ミトコンドリアに存在するMPTP(mitochondrial permeability transition pore)は虚血再潅流により開放され心筋細胞を死に至らしめる。この開放を抑制することが大きな心筋保護効果をもたらす事は成熟心筋において証明されているが、未熟心筋での報告は少ない。本年度は昨年に続いてウサギ未熟心を用いてMPTP阻害剤であるプロポフォールの心筋保護効果についてLangendorffモデルを使用して研究した。ウサギ未熟心筋では成熟心筋とほぼ同じ濃度において虚血後心機能の改善効果が認められたがさらに研究を進めたところ最も効果を示したのは成熟心より低濃度の2μg/mlであった。この心筋保護効果は冠血流への乳酸排出量の軽減効果で裏付けされた。虚血再還流後の心筋切片を光学及び電子顕微鏡で観察したところ、核の委縮や細胞質I-band出現、ミトコンドリア膨化、間質浮腫など有意な障害が確認され、プロポフォール2μg/mlの群ではこれらの変化は軽減されていた。さらにプロポフォール濃度を段階的に上げていくと心筋保護効果は消失し10μg/mlではコントロール群より悪い心機能を示した。上記の乳酸の冠還流液中への流出や病理所見でもコントロールより強いダメージであった。今年度は十分に再還流時間をとって改めて検討を加えたが、上記の結果は未熟心臓にとってMPTP阻害剤は両刃の剣となり細心の注意を払っての使用が必要であることを示している。又、昨年度はウサギと平行してブタ未熟心臓をin vivoで使用して(人工心肺使用モデル)MPTP阻害剤の効果を検討した。試行錯誤が続いた後、ブタ新鮮血液を使用した体外循環によって比較的安定した実験が可能となった。大震災の影響からブタ新鮮血の提供を受けていた施設に問題が生じて本年度はその提供を受けることに困難が生じた。このため人工心肺モデルの実験は3回(コントロール2、プロポフォール群1)のみであり、その検証は将来に委ねることとなった。我々は今後もこの実験を続けていく方針である。
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