2010 Fiscal Year Annual Research Report
神経膠芽腫腫瘍幹細胞における遺伝子異常の時間的・空間的解析
Project/Area Number |
20591708
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
林 裕 金沢大学, 医学系, 准教授 (90262568)
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Keywords | 神経膠芽腫瘍 / 遺伝子異常 |
Research Abstract |
【目的】神経膠芽腫(glioblastoma)の中には前駆的な良性病変から長期的経過を経て後、最も悪性である神経膠芽腫に変化する2次的神経膠芽腫(secondary glioblastoma)の存在が知られている。我々はそのような症例における時間的・空間的な遺伝子異常の特徴を解析することにより、神経膠芽腫発生のおける特定の遺伝子の役割を検討した。 【対象と方法】今回我々は約14年の経過を経て、良性の毛様細胞性星細胞腫(pilocytic astrocytoma)から近接する部位に悪性神経膠腫が発生した症例のそれぞれの病変より腫瘍細胞を摘出した。それぞれの腫瘍細胞におけるEGFR遺伝子、P53遺伝子、FAS遺伝子、BRAF遺伝子およびIDH1遺伝子の異常をFISH法およびダイレクトシーケンスにより解析した。 【結果】本症例はautoimmune lymphoproliferative syndrome(ALPS)を有しており、本症候群に関連するFAS遺伝子の生殖細胞遺伝子異常が背景に存在した。両腫瘍細胞においてFAS遺伝子異常および同一の点突然変異をP53遺伝子に認めた。EGFR遺伝子、BRAF遺伝子およびIDH1遺伝子は両病変ともに異常を認めなかった。 【考察】通常のsecondary glioblastomaにおいては発生過程においてIDH1異常を認める。しかし本例においてはIDH1遺伝子の異常は認めず、アポトーシスに関連するFAS遺伝子の異常および、幹細胞調節を含め広範な細胞制御に関連するP53遺伝子の異常が腫瘍の経時的は発生過程に関連している可能性が考えられ、通常とは異なる発生経路の存在が示唆された。
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Research Products
(4 results)